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オオミズナギドリと内航貨物船がとらえた津軽暖流の渦

海鳥や貨物船のデータを使い、海流測定をより高精度に

2015年12月10日 11時47分更新

文● 行正和義 編集/ASCII.jp

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オオミズナギドリ(左)と内航貨物船(右)

 国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は12月4日、海鳥の追跡データや内航船の航路記録を用い、より高精度な海流の観測が可能な手法を開発したと発表した。

 海流分布の測定や予測は古代から船乗りにとっては重要な学問・知識であり、現在の船舶運航や漁業にとっても重要なことには変わりない。観測にはブイによる直接測定や人工衛星からの撮影など、さまざまな手段が設けられているが、観測点の解像度や精度の点ではまだまだ粗いという。

オオミズナギドリのGPSロガーから得た海流のデータを同化する前の海流モデル(左)と同化した海流モデル(右)。青矢印はオオミズナギドリの偏流データ

 一方、動物行動学では野生動物にGPSロガーを装着して行動追跡が行われている。名古屋大学、東京大学大気海洋研究所の研究グループは、海鳥のオオミズナギドリを対象として、GPSデータから海上を漂って休息している間の位置変化を拾い出し、そこから海流を推定することに成功した。

内航貨物船の航行記録から計算した偏流を同化する前の海流モデル(左)と同化した海流モデル(右)。青矢印は同時期に独立して存在した海面漂流ブイのデータ

 さらに海上技術安全研究所では、日本各地の港を結んで航行する内航貨物船に対して気象データや海流予測を含む海象データを提供、効率的な運航をサポートしている。今回、これに並行して航行記録における対地速度と対水速度の差から海流を検出する技術を開発した。

JAMSTECの海流予測モデルのオオミズナギドリのデータを同化させ、従来100km程度であった検出限界を下回る直径50kmの渦も検出した

 JAMSTECでは、オオミズナギドリと内航貨物船の偏流データを用いることで、東北・北海道沖での津軽暖流の渦を検出することに成功した。双方のデータを当てはめることで、より高精度な海流予測モデルを作ることが可能という。

 測定する点を増やすことで解像度が劇的に向上することを実証できたことは大きく、とくに内航船に関してより細かな海流予測は海運業界にとって大きく役立ち、協力によって新たな海流観測網の出現に期待できる。JAMSTECでは、それぞれのデータは台風や暴風によって誤差が生じることを踏まえて精度の向上を進め、ウミガメなどの動物行動学研究なども視野に入れているようだ。

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