中国にもっとも近いIT事情を抱える国はベトナムである。いや、正確に言うと、中国のようなIT事情になりそうな国を挙げよといわれればベトナムをひとつに挙げる。
ベトナムは公共交通が発達せず、自身のバイクで自在に動くことが基本な、アジアでは珍しい国である。
バイクがベースなので、路面にバイクでピットインでき、Wi-fiを用意したカフェが南北問わずある。かつて一部の金持ちベトナム人はノートパソコンを携えてカフェ前にバイクを止めてはノートパソコンをカフェで広げ、今は多くのベトナム人が、スマートフォンやタブレットを見て休憩する。
なにせバイクが生活の軸だから、移動しながら携帯電話など危なくて利用できないのだ。
バイクでスマホをいじる人もいれば
まったくスマホに触らない人もいる
ところが最近になって、スマホをいじりながらバイクを飛ばす危なっかしい輩も少しだが出てきた。ここ1年で、スマートフォンで時間を潰す店員や、息抜き時にスマートフォンをいじる人が少しずつ見られるようになったが、さらに普及し、依存度が高まったといえよう。
ただ、中国では誰もかれも外ではスマートフォンに見入っているが、ベトナムでは、スマホに一切触ることなく談笑する人々もいれば、ただぼーっと座っている人もいれば、新聞を読む老人もいて、スマートフォンに見入っている人はあまり見ない。
ベトナム人と中国人の違いを挙げればデジタル製品が好きか否かというのが挙げられる。中国人の店番は15年前から、音の出る電卓を叩いて喜んでいた。
店にはレジとデスクトップパソコンが置かれ、それがタブレットに、レジ内蔵パソコンに変わっていったが、常にレジを管理しながらデジタル製品でゲームを遊んだり動画を見たりして遊んでいた。
ベトナムは今をもってして店番はパソコンもなく電卓を片手に待機する人が目立つ。理由のひとつとして、ハイテクマニア気質がないという点とは別に、「ベトナムの通貨“ドン”の0の数があまりに多い(食事レベルで数十万ドンである)ので、電卓をもたざるをえないのではないか」とも思えるが、だとしてもスマートフォンを導入すればよさそうではある。
iPhoneのシェアを奪いそうな
ベトナムスマホメーカー登場!?
そのスマートフォンだが、多くの人が、見栄のためにiPhoneを購入しようとしていて、スマートフォンの中でもiPhone率は筆者が訪ねた首都ハノイでは結構高い。所得が高いホーチミン市ではさらに普及しているのではないかと思う。
「スマートフォンは買いたいが、iPhoneは買えない」という層に訴えるのが中国の「oppo」。ベトナムのIT情報は、中国同様、メディアにしてもショップ店員にしても基本的なスペックしか紹介しないため、基本スペックに出ないこだわりポイントは知られることなく、「無名やベトナムメーカーよりはマシ」な中国メーカーの製品に注目が集まるのだ。
しかし、ここで思わぬメーカーが登場した。ベトナムの「Bkav」というメーカーが、Qualcomm Snapdragon 801搭載をはじめとしたことで「iPhoneよりすごい」ことを売りにしたスマートフォン「Bphone」を今年ネット限定で発売したのだ(しかも製品はベトナムで組み立てられたらしい!)。
ウェブサイトもそれっぽい作りで、まるで小米のようなデビューだが、残念なのは128GBモデルで2220万ドン(12万円超)、16GBモデルで1098万ドン(6万円超)と、ベトナム電子製品に信頼のないメーカーがリリースするには無理がある値段で、ベトナムのサイトではネガティブな意見ばかりが投げられた。
小米はネット限定価格ながら、ハイスペックで低価格がウケて、まずマニアの間で話題になり、そして一般人に広がった。
マニアに石を投げられたら人気拡大は難しいように思う。だがこれに気づいて、小米並みに安い製品が出てくれば……ひょっとしたら、ゆっくりだが状況は変わっていくかもしれない。
(次ページに続く、「SNSは中国やロシア製アプリが人気に」)
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