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「システム39」開始後1年間の軌跡

実際どうなの?ジョイゾーが始めた「定額制SI」の反響

2015年11月18日 09時00分更新

文● 川島弘之/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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 2014年6月、とあるサービスが産声を上げた。ジョイゾーが始めた「定額制」「来店型」「初回無償」のシステム開発サービス「システム39」だ。そのユニークなビジネスモデルが話題を呼び、定額でシステムを開発することから「定額制SI」と呼ばれるようになった。

 それは人月商売の従来型SIにも一石を投じるものだ。実際のところ、その反響やビジネス状況はどうなのか。ジョイゾー代表取締役の四宮靖隆氏に聞いた。

ジョイゾー代表取締役の四宮靖隆氏

ユーザーに優しいビジネスモデル

 システム39は、定額制のシステム開発サービス。サイボウズの「kintone」を使って、顧客の要望に応じたシステムをさくっと仕上げる。Excelで行っているような顧客/売上/在庫管理などのシステムが主な対象となる。

 最大の特長は「定額39万円」と「来店型」のビジネスモデル。ユーザーがサイボウズ社内にある「Cybozu Cafe」を訪れ、そこで打ち合わせを行う。初回の打ち合わせは無償で、ユーザーの要望を聞きながら試作品を作成。社内に持ち帰って試してもらい、改善点や新たな要望を聞きながら、2回目、3回目の来店で完成品に仕上げていく。さらに導入後の実運用で問題が出た場合に、4回目の来店で改善するという。

 この最大4回のヒアリング・機能実装までが定額39万円に含まれる。「初回無償」なのも特長で、ユーザーは試作品を社内で試してから実際に契約するかを判断でき、もしも気に入らなければ費用発生前に止められる。ユーザーに優しいビジネスモデルである。

 また、ユーザーはその場でシステムが作られていく様子を見られるため、実際の運用をイメージしながら、より踏み込んだ相談がしやすい。対するジョイゾーは要望を聞きながら、その場でかちゃかちゃと機能のサンプルを作り上げてしまう。その流れがどんなものか以前より興味があったのだが、今回、幸運にも実際のやり取りを見ることができた。

ジョイゾーの腕の見せ所

 その日、Cybozu Cafeを訪れたのは、オフィスナビ株式会社 管理部長の坂上雅一氏だ。同社は大阪でオフィス仲介・ビル仲介・オフィス移転コンサルティングを手掛ける会社で、2015年5月に「システム39」を活用し、不動産の案件管理システムを構築していた。

 ところが、実運用に移ってから、細かい点で新たな要望が。さらにブラッシュアップすべく、「kintoneアプリカスタマイズ」というサービスを利用することに決めたという。

 こちらは「アプリを何回修正しても1週間20万円」というもの。「システム39」はユーザーの目の前でアプリを作り上げるため、原則コーディングが発生する開発は行わず、kintoneの基本機能のみを使ってシステムを構築する。それより深い機能を実装したい場合に、「kintoneアプリカスタマイズ」の出番となる。

サイボウズの日本橋オフィスにある「Cybozu Cafe MORI」

 「ポータル画面で現状をパッと把握したくて」。

 坂上氏の要望は、東京・大阪・福岡といった拠点毎の案件対応数をシンプルにグラフ化したいというものだった。現状そうした集計はCSV出力・Excel加工で対応しているが、ミスの原因や現場の負荷となっているため、ポータルで直感的に見たいのだという。

 「案件管理から『拠点』『案件数』のデータを引っ張ってきて、『今日の対応数』という形であれば、基本機能だけでできますね」。四宮氏はポチポチとkintoneを操作して、その場でカスタマイズして見せる。

 「例えば、昨日の対応数もポータルで見られるようにできますか? マネージャが前日、前週、前月の対応数もパッと見たいそうなんですよ」。

 「カスタマイズすれば過去の集計もできそうですね。ただ、カスタマイズしたものってポータルに表示できなくて。ポータルではなく、案件管理アプリに一度入ってからなら、簡単に集計できるんですけど」

 「それがやっぱり、理想としては、一番最初の画面でそうした情報を見たいようでして」。

 要望の細かさによっては、kintoneだけではどうしても対応しきれないこともある。可能な限り基本機能に収めつつ、どうしても範囲外となる部分はカスタマイズで的確に対応する。そこがジョイゾーの腕の見せ所だ。

後ろのディスプレイにシステムが作り上げられていく様子が映し出される。顧客はそれを見ながら、完成形をイメージできる

 坂上氏が付け加える。「例えば、kintoneの上に一枚ガワを被せて、そうした情報を見せるのでもいいんですけど」。その言葉が突破口となった。

 「そっちの方がまだやりやすそうですね。ただ、Webサーバーが必要になるので、そこをどう準備するか。既存のサーバーがあればそこに置かせていただくこともできますし、AWSを使うとかであれば、その運用管理も対応できますし」

 「それでしたら、社内に雑多に使っているファイルサーバーがあって、老朽化もしてるので、それを外出しして、一部をWebサーバーとして使えるかもしれません」と坂上氏。

 「ファイルってどんな種類のものですか?」。四宮氏が聞く。「Excelとか、社員が一時保管に使っているものです」「頻繁に出し入れしますか?」「そうですね」。四宮氏が気にしたのはパフォーマンスだ。

 「ファイルサーバーだと外出しするとレスポンスが問題になるかもしれません。そこも含めて考えましょう。ひとまずダッシュボードを別に作るとなると、開発コストが必要になりますので、どんな感じでいくらでできるか、検討してみますね」

 ほかにも「担当者の並び替え」や「物件名が長いと帳票にしたときに枠をはみ出してしまう」など細かい改善点が挙がった。その都度、四宮氏はkintoneのカスタマイズ例を見せながら、「こんな感じはいかがでしょうか?」と提案していく。

 そうして40分ほどで打ち合わせは終わった。落ち着いたトーンで会話が続けられる中、四宮氏のキーボードを打つ音が軽快に響いた。カスタマイズする操作の速さもさることながら、即興で次々と要望を形にしていく閃きの速さに舌を巻く。打ち合わせの様子を見ながら、「これは瞬発力の世界だ」と、妙な感想を抱いてしまった。

 さて、それでは実際の反響やビジネス状況はどうなのだろうか。次ページでは、四宮氏にズバリ訊いてみた。

四宮氏(左)と坂上氏(右)。打ち合わせ後にCybozu Cafeの前で

(→次ページ、四宮氏にビジネスについてあれこれ訊く

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