速さを身につけたディーゼルデミオが3位表彰台!
10月24~25日に鈴鹿サーキットで開催されたスーパー耐久最終戦。
様々なクラスが入り乱れて繰り広げられるバトルは圧巻。200km/hに満たないホンダフィットの横をメルセデスSLS AMG GT3が270km/hでぶち抜いて行く様は、他のレースでは味わえない迫力だ。
そのスーパー耐久に、日本で初めてクリーンディーゼルのレーシングカーとして登場したのがST-5クラスのTEAM NOPROが走らせる新型マツダ・デミオ「DXLアラゴスタNOPROデミオSKY-D」。すでに何度かASCII.jpで紹介しているので、ご存じの方もいるかと思う。
1.5リッターのディーゼルターボはトルクが2リッター車並みに太いとは言っても、開幕戦のもてぎ5時間では同じクラスのホンダ・フィットⅢにラップタイムで10秒も遅く、本当に勝負になるのか?と疑問を抱くことも多かった。ただし、燃費はレースカーとは思えないリッターあたり7km以上という、ライバルの倍近い数値をたたき出していた。だからこそチームは、燃費を武器にピットストップ回数を減らすという作戦に重きを置いていた。
しかし、第5戦岡山にはヘビーなウェットコンディションとはいえ、走りでフィットⅢを追い抜き、一時は2位を走行するほどに成長。残念ながらスピードアップにトランスミッションが音を上げてのリタイアとなってしまったが、実力の片鱗は見せていた。
開幕戦から実に50kg削減という軽量化も進み、FRP製オリジナルボンネットなどの開発も進んでいった。そんな中、まさに満を持してという言葉がふさわしい最終戦鈴鹿への参戦である。
ディーゼルデミオの成長は予選から見え始めていた。岡山戦でのトップとのラップタイム差は4秒近くあったが、この鈴鹿ではBドライバー予選に関して言えば1.4秒の差しかない。予選順位は7台中6位であるが、予選上位だったマシンが予選中にクラッシュしてリタイアとなったため、5位に繰り上がってのグリッドとなった。また、ST-4クラスの一台がマシン不調により予選通過できず、嘆願書により最後尾スタートとなることが決まり、ディーゼルデミオは最終戦にして初めて、最後尾ではないスターティンググリッドにつくことができたかのように思えた。
しかし、決勝日当日。ディーゼルデミオよりグリッドが後方であった2台が、リタイアを申告し受理された。その結果、ディーゼルデミオは今季スーパー耐久シリーズすべてで最後尾からのスタートとなってしまったのだった……。
最後尾からとはいえ速さを身につけたディーゼルデミオ、スーターティングドライバーは谷川達也選手。見事なスタートで序盤、一気に2台のフィットⅡを抜き去り3位のポジションへ進む。このまま順調にレースが進めば言うこと無しという見事な展開であったがそれも長くは続かない。
トップ周回にして17周目にST-Xクラスのマシンがバーストし、そのデブリ除去のためにセーフティーカー(SC)が導入された。SCが解除され、レースが再開した瞬間、ST-4クラスで多重クラッシュのため、再びSC導入。そこで谷川選手のロングラン作戦を変更し野上達也選手にドライバーチェンジ。このピットインでは給油せず、その分のピットストップ時間を短縮することに成功した。
野上選手は「ポジションを落とさないように、守りの姿勢を崩さなかった」と語るが、その間ライバルは次々と2度目のピットインをはじめ、野上選手とデミオは2位に浮上した。そして、そのポジションをキープしたままピットイン。再び谷川選手にマシンを預けた。
ピットタイミングもあって、一時はトップを走ることもあったディーゼルデミオ。シーズン初頭では考えられなかった光景が、コース上で繰り広げられる。だが、スピードに勝るライバルフィットⅢ勢はデミオに襲い掛かってくる。
69号車BRP★J's Racingフィットにトップも譲るも、その後も果敢に攻める谷川選手。また、ドライブスルーペナルティで遅れていたはずの2号車ホンダカーズ野崎 with CUSCO & BOMEX FITが、持ち前の速さを発揮してディーゼルデミオに追いつくと、ホームストレートから第1コーナーで抜きにかかる。結果的にこの2台のフィットⅢに抜かれはした。しかし、あの遅かったディーゼルデミオがフィットⅢを相手にバトルをするところまで成長したのだ。
そしてチェッカーフラッグ。チームスタッフはフェンスを乗り越えんばかりの興奮を露わにした。パルクフェルメから表彰台に向かう谷川選手と野上選手。特に谷川選手は「楽しめたレース」と語った。
シーズン初頭は色物扱いされていた感のあったディーゼルデミオが、参戦初年度で結果を残したことは各方面で高い評価を得ているようだ。なお、岡山以外の5戦で確実にポイントを取っていたことでシリーズランキングは4位と健闘した。来年につながる素晴らしい結果であったと言える。