【後編】現役ミリタリーライター宮永・有馬のミリタリー放談
超大和型!氷山空母!WoWsに登場させたい8隻のロマン艦
史上最後の戦艦ヴァンガード
船体キレイ、上部構造も近代的! 主砲だけ「パフッパフッ」
宮永 「ヴァンガード」を考えるときに私がいつも思うのは『イギリスのツリーってどうなるんだろう』ってこと。というのも、イギリスツリーは1つヒントが見えていて、このあいだ「ウォースパイト」がTier6戦艦として登場しました。
あれは一次大戦の頃に造った超ド級戦艦クラスの最終バージョンであるクイーン・エリザベス級戦艦なので、ここで1つの線引きができたってことじゃないですか。するとリヴェンジ級、ネルソン級、キング・ジョージV世級、そして「ヴァンガード」がTier7、8、9、10と来るはずなんです。
でも、そこで「……ん、待てよ」と(笑)
有馬 微妙ですよね(笑)
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1/450 艦船シリーズ イギリス海軍戦艦 バンガード Z15 |
宮永 そう、どれも性能に何がしらの問題があるわけです。「ヴァンガード」はキング・ジョージV世級よりも間違いなく上ですけど、Tier9、10の戦場に38cm砲戦艦を持ち込んでも残念な結果にしかならないと思うんですよ。まあ、ゲームなので主砲換装という手段で性能を整えることもできるでしょうけどね。
でも私としては、イギリスツリーにはライオン級も外せないと思うんですね。そうしないと「大和」や「モンタナ」を相手するには、ちょっと厳しすぎるので。
有馬 じゃあTier9あたりに「ヴァンガード」を入れて、10にライオン級かなあ。8は、ネルソン級?
宮永 そうですねえ、ネルソン級がTier8……8でも辛いような気がするけど、まあ40cm砲ですからね。そうすると7にキング・ジョージV世級がきて……。
有馬 しかし長門型とキング・ジョージV世級が同格ってのも厳しいですよねえ。うーん……。
宮永 さらに「フッド」の扱いをどうするの、とかね。イギリスツリーは考えるポイントが多いんですよ。
有馬 あ、そうか「フッド」もか。「フッド」は外せないですね。
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UNIMAX 1/700 巡洋戦艦フッド デンマーク海峡 1941年 |
※「ヴァンガード」……イギリスが建造した史上最後の戦艦。倉庫に保管していたリヴェンジ級の予備の38cm砲を主砲に採用し、工期短縮と建造費低下を狙ったが、結局その完成は第二次大戦に間に合わなかった。
※ライオン級……日本の大和型戦艦に対抗するため、第二次ロンドン条約のエスカレーター条項を利用して計画されたイギリス海軍の戦艦。40cm三連装砲3基を搭載する。計画4隻中2隻が起工されたが、第二次大戦の勃発により建造中止。
※リヴェンジ級……第一次大戦時に建造されたイギリスの戦艦。同型艦5隻はすべて艦名がRから始まるため「R級戦艦」とも呼ばれる。第二次大戦でも各方面で活躍した。
※キング・ジョージV世級……イギリスの戦艦。35.6cm砲を四連装2基、連装1基搭載する砲塔混載戦艦。同型艦は5隻。このうち2番艦が、マレー沖海戦で日本に撃沈された「プリンス・オブ・ウェールズ」である。
※「フッド」……イギリスの巡洋戦艦。基本性能が極めて高く、巡洋戦艦ながら当時の戦艦と同等以上の砲力と防御力を備えていた。しかし、そのために近代化改装が先延ばしとなったまま第二次大戦に突入。デンマーク海峡海戦において戦艦「ビスマルク」の砲弾が弾薬庫を直撃し、瞬時に爆沈した悲劇の戦艦としても知られる。
イギリスは巡洋戦艦の技術ツリーがあってもいい
宮永 まだ判らないですけど、イギリスは巡洋戦艦のツリーを別個に作ってもいいと思うんですよ。それくらい艦の種類は豊富なので。Tier6に「ウォースパイト」が入ったことで、9に「ヴァンガード」が入るんじゃないかとか、色々と考えることが多くなりましたね。
有馬 ただ「ヴァンガード」は非常にバランスの良い戦艦でしたね。高速戦艦と言っても良い速力を持ってますし。
宮永 高速戦艦とはまさにこれのことだろう、って気もしますしね。アメリカにはアイオワ級がありますけど、戦艦としてのまとまりの良さでは「ヴァンガード」が上だと思います。船体キレイ、上部構造も近代的! 主砲だけパフッパフッ、て感じで(笑)
「ヴァンガード」はイギリスが国の威信をかけて造った史上最後の戦艦で、設計から何から文句なし。ただし主砲は造ってる暇がなかったから、昔の戦艦用に作っていた在庫を引っ張り出してきて搭載した艦なんですよね。
有馬 そう、いうなれば戦時急造型の戦艦なんですよ。
宮永 主砲以外のすべてが素晴らしい、というね(笑) ただ、相手がドイツの戦艦だったらこれで充分な性能を持っていたわけです。とにかく戦艦の数が欲しかった時期に建造が始まった戦艦ですので。
有馬 まあ、1930年代以降にはアメリカ・イギリスの戦艦にはSHSが導入されるので、威力が他国の同じ口径のものより一割二割は向上していくのですけどね。それでも「大和」を相手するには辛すぎますよねえ……。
宮永 ですね、Tier10の価値がある戦艦ではないと個人的には思います。
イギリスツリーを考えると他にも外せない戦艦があるんですよ。歴史的な意義から見て「ドレッドノート」は外せないだろうし、イギリス人から一番人気があるという「タイガー」も外せない……そう考えると、ツリーって意外に窮屈なもんだなあと思っちゃいますね。
※SHS……スーパー・ヘビー・シェル。1930年代にアメリカで開発された、大口径砲用の超重量砲弾のこと。
※「ドレッドノート」……1906年に完成したイギリス戦艦。同一口径の主砲塔5基のうち3基を軸線上に置いて、どの方向にも4基の主砲塔を向けることができるという当時としては画期的な配置を採用しており、それまでの戦艦を一気に陳腐化させたことで知られる。「ドレッドノート」と同格の能力を持つ戦艦を「弩級」、それを超える能力を持った戦艦のことを「超弩級」と呼ぶが、これは後に大きさや凄さを表す日本語の語源となる。
※「タイガー」……第一次大戦時のイギリスの巡洋戦艦。同型艦はない。アイアン・デューク級戦艦の巡洋戦艦版といえる設計だったが、アイアン・デューク級をタイプシップとするオスマントルコの戦艦「レシャディエ」の巡洋戦艦版として日本の金剛型が建造された結果、両者は非常に似通ったデザインを持つこととなった。
(次ページでは、「ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦の真価はソ連ツリーで判明!?」)
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