欧州が先行する電力自由化の流れ
電力自由化の流れは、欧州が先行している。発送電分離や小売市場の自由化は、1996年のEU電力自由化指令を発端 に、各国がそれに追随する形で対応を行なっている。
もっとも先行した英国では1990年に発電会社3社、送電会社1社に分割民営化。1999年にはすべての需要家が供給事業者を選択できるようにしている。また、ドイツでは1998年にエネルギー法を成立させ、発電部門の参入規制の緩和、送電部門の会計・機能の分離、小売全面自由化に乗り出している。
これに対して、フランスでは原子力発電が約8割を占めていることもあり、自由化には慎重な姿勢をみせており、小売完全自由化は2007年だ。一方、米国では、1996年に送電系統を所有する電力会社に対して、第三者へ同等な条件で送電サービスの提供を義務づけるオーダー888を実施。さらに1996年には、カリフォルニア州、ロードアイランド州、ペンシルベニア州での小売市場の自由化を法制化するなど、2000年までに24州とワシントンD.C.で小売自由化が決定している。
電力自由化で先行している英国では、電力の拡販を図るために、金融サービス、自動車関連サービス、通信関連サービスなどとセットにした販売によって、需要家を獲得した実績が出ているという。また、米国では、電力提供に関するノウハウを活用して、需要家に対する省エネ利用アドバイスなどによって、効率的な利用を提案するといった例もあるという。
日本では2016年4月からの電力小売全面自由化にあわせて、需要家と呼ばれるユーザーも、その活用を積極的に検討し始めている。
調査によると、54%のユーザーが電力会社の切り替えに対して検討する意欲をみせており、7割以上のユーザーが電力会社選択時に安さを重要視。5%料金が低下すれば、切り替えたいとするユーザーは約半数にのぼる。そして、いくら使っても料金が変わらない定額制の導入や、ピークシフトを促す時間帯別料金の導入、各種料金とセットにした新たな料金体系に対する期待も高い。だが調査によると、世界的にみても、必ずしも電力料金が下がったとは言い難いという状況になっているという。
電力自由化まであと半年。顧客獲得や安定的成長のための戦略ツールとなるIT武装が、重要な要素となるのは間違いない。