理化学研究所と東京大学は9月25日、電気エネルギーを直接利用している生きる微生物を特定し、その代謝反応の検出に成功したと発表した。
植物は太陽光をエネルギーにして栄養分を合成し、また太陽光の届かない地底・海底の生物は水素や硫黄などの化学反応からエネルギーを得ている。研究チームでは電気を直接エネルギーにする生物が存在すると考え、海底の熱水環境域に生息する微生物の研究を進めていた。
深海熱水環境では電気を非常によく通す岩石が豊富に存在し、鉄イオンをエネルギーとする鉄酸化細菌が生息する。研究チームは鉄酸化細菌の一種Acidithiobacillus ferrooxidans(A.ferrooxidans)に対し、鉄イオンを使わず電気を通した状態で培養し、細胞が増殖することを確認した。
さらに、A.ferrooxidansの細胞では、体外の電極から電子を引きぬくことでNADH(ニコチンアミド-アデニンジヌクレオチド)を作り出し、ルビスコタンパク質を介して二酸化炭素から有機物を合成する能力を持つことを突き止めた。また、わずか0.3V程度の小さな電位差を1V以上にまで高める能力を持ち、微弱な電気エネルギーの利用を可能にしているという。
光と化学物質に加えて電気が生命のエネルギーとなるという新たな発見は、今後の海底や地底の生態圏を探るうえでの知見として重要という。また、きわめて微小な電力で生きる電気合成微生物の存在は微小電量の活用という点でも新しい可能性があると考えられる。