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5Gに6億ドルを投資、並々ならぬ決意とは

5G最前線を追う! ファーウェイの上海R&Dセンター見学記

2015年09月24日 09時00分更新

文● 川島弘之/TECH.ASCII.jp

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そして、5Gへ――15Gbpsのテスト結果も

 無線ネットワークは進化を続けている。現在世界中で標準化に向けて取り組まれているのが、次世代通信方式「5G」である。2020年以降の実用化を目標としているが、具体的な仕様などはこれから詰めていかなければならない。

 ファーウェイも5Gには積極的に投資しており、投資のリターンは2030年頃と言われるにもかかわらず、2009年から研究開発を始めている。現在9カ所のR&Dセンターで300人のエキスパートが従事し、2018年までに6億米ドル以上を投入する予定だ。

5G技術におけるイノベーションをけん引

 上海R&Dセンターでは、5Gまでのファーウェイの取り組みを追うことができる。まずは「LTE-Advanced」。LTEをさらに大容量・高度化を実現した規格で、3GPPによって標準化された。

 中核となる技術は、複数の異なる周波数帯の電波を束ねて、1つの通信回線としてデータの送受信を行う「キャリアアグリゲーション(CA)」や、データの送信側(基地局)と受信側(ルーター)のそれぞれに4本のアンテナを搭載する「4x4 MIMO」。

 2015年3月にドコモが開始した「PREMIUM 4G」がLTE-A準拠のサービスで、国内最速となる下り最大225Mbpsのスループットに対応する。

 ファーウェイは2015年4月に、香港の通信事業者・HKTと共同で、LTE-Aソリューションデモを実施したと発表(ニュースリリース)。世界初という「IP-RAN(Internet Protocol Radio Access Network:インターネットプロトコル無線アクセスネットワーク)」をベースとしたもので、3つの搬送波を束ね、最大440Mbpsの下り通信速度を達成している。

LTE-Advanced

 また、5Gの先取りとして「4.5G」なる技術も推進しており、2015年7月にはソフトバンクと共同研究開発に関する覚書を締結した(ニュースリリース)。

 4.5Gは、既存の4G技術をベースに、ソフトウェア強化やクラウド技術を活用して実現するもので、今後長年にわたって5Gとの共存が可能とされる。

 CAや4x4 MIMO、8x8 MIMO、アップリンクとダウンリンク双方における256QAMなどの技術を採用することで、シングルユーザーのスループットを「数Gbps」に向上するほか、「10万」の同時接続数、「10ms」のレイテンシを実現するという。

4.5G

 では、なぜこうした技術が必要なのか。理由は「ウェアラブル」「スマートグラス」「ドローン」「自動運転車」「スマートメーター(スマートシティ)」といった技術の台頭にある。爆発的に種類と数が増えるモバイル端末で安定した通信を確保するために、世界中で次世代通信方式の研究開発が進められているのだ。

 その1つのマイルストーンとなるのが5Gである。同時接続数は「1000億」、スループットは「10Gbps」、レイテンシは「1ms」が目標となる。「具体的には来年から議論が始まるが、方向性はほぼ決まっている」とケリー氏。それに先立ち、ファーウェイは基地局のプロトタイプを作り、実証実験を行った。結果「シングルユーザーで15Gbpsを達成した」という。

5G

5G基地局のプロトタイプを開発、テストで15Gbpsを達成した

 ファーウェイの5Gにかける意気込みには並々ならぬものがある。現在、上海R&Dセンターでは「インターフェイス」や「電源の仕組み」などについて研究開発が進められており、10年間で6億ドルを投資する予定だ。

 また、2014年に英国のサリー大学に設置された「5Gイノベーション・センター(5GIC)」の設立に貢献し、同年9月に日本で発足した「第5世代モバイル推進フォーラム」に参画した。

 さらに2015年7月には、欧州の5G PPPで新たに発足した19の共同研究プロジェクトのうち、5つに参画したと発表(ニュースリリース)。これらを含め、世界で20以上の大学と5Gに関する共同研究プログラムを実施しているという。

 「ファーウェイは3G時代はリーダーではなかったが、4G以降ようやくリーダーを務められるようになった。来年から4.5Gが始まる。そこで主導権が得られれば、必然的に5Gもリードする立場にいられるはずだ」と語るケリー氏。

 意気込みの背景にあるのは、もう取り残されはしない――そんな決意のようだ。

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