昨年発売の「iPhone 6」シリーズ(「iPhone 6」と「iPhone 6 Plus」)は、史上最も売れた工業製品として記録を作ったという。その「iPhone 6」シリーズと見た目こそそっくりでも、中身は大幅に進化している「iPhone 6s」シリーズは、この記録を塗り替えかねない魅力的な製品に仕上がっている。
処理性能や通信性能が大幅に向上しているのも魅力だが、やはり、なんといっても最大の目玉は、スマートフォン操作の新境地を切り開いた「3D Touch」操作と、デジタルライフ時代の新しい写真表現に挑んだ「Live Photos」の搭載だろう。
本レビューでは、「iPhone 6s」シリーズ発表直後から10日間以上にわたって本製品を毎日触ってきた林 信行氏が、その魅力について、実際に使い込んでみた感想を交えながら紹介する。
中上級ユーザーを虜にする「3D Touch」
「iPhone 6s」シリーズそのものについては、すでにアップルのサイトにも情報が上がっていれば、昨晩からレビュー記事も数多く上がっているので、改めてここでは説明しないが、「3D Touch」にはやはり触れておきたい。アップルは、新たにプレス(画面を強く押し込む)という操作を加えただけで、中上級者のスマートフォン操作を完全に変えてしまった。
ここであえて“中上級者”としたのは、「iPhone 6s」が初めてのスマートフォンで、まだスマートフォンそのものに慣れていないという人は、「3D Touch」の操作を知らない状態でも、これまで通りの操作方法で十分iPhoneをフル活用できるからだ。
「3D Touch」は、すでにiPhoneの操作には十分慣れたユーザーが、いちいちアプリを起動してから連絡する相手を選んだり、使いたいモードに設定を切り替えたり、気になるWebのリンクをひとつひとつ開いては閉じたりする、“あの煩わしさ”から解放してくれるために用意されている。
アップルらしい、冴えたやりかた
iPhoneが何といっても素晴らしいのは、老若男女やデジタル機器への精通度合いに関係なく、誰でも簡単に使えること。文字入力の方法ひとつをとっても、これまでの携帯電話に慣れた人はフィーチャーフォン同様に「あかさたな」の文字が並ぶボタンを連打して「か→き→く」と文字を選ぶこともできれば、スマートフォンに慣れた中上級ユーザーなら1回の操作で目的の文字が入力できるフリック入力を選ぶことができる。パソコン操作のほうが慣れているという人なら、ローマ字キーボードを使うのもいい。
同様に、音楽再生時の曲スキップは「Music」アプリを移動して行なってもいいが、中上級者にはもっと簡単に画面を下から上にスワイプすると現れる「コントロールセンター」からもスキップできる。さらに知っている人は、ヘッドホンについている中央ボタンの2回押しで曲送り、3回押しで曲戻しできることを知っていて、この操作を愛用している。
機能というのはあまりに可視化してしまうと、かえって初心者を混乱させてしまう。
そのため、アップルの製品では、極めて単純化させた基本の操作方法を見せておきつつ、初心者用の操作ではまどろっこしいという中上級ユーザーには、マニュアルやらインターネットを見ればすぐに出てくる別の操作方法も用意していることが多い。
今回の「iPhone 6s」シリーズでも、中上級者ユーザーを虜にする素晴らしい操作方法が搭載された。「3D Touch」だ。
これまでiPhoneの画面操作では、以下のような操作が基本だった。
- タップ:画面のアイコンなどに触れる
- ダブルタップ:画面をポンポンと2回叩く
- ホールド:画面上のアイコンなどに指をしばらく置きっ放しにする
- スワイプ:タッチしたまま左右、上下に引っ張る
- ピンチ:画面に置いた2本の指を広げたり、狭めたりする
- ローテート:画面に置いた2本の指を回転させる
要するに、画面に置いた1、2本の指を、そのままどのタイミングで離すのか、どういう方向に並行移動するのかで、多彩な操作を実現していたのだ。
勘の良い方ならここで気が付くかもしれないが、つまり、従来の操作体系に沿って画面の奥行き方向への操作が加わったということで、「3D Touch」というわけだ。
たったひとつの新操作だが、これがスマートフォン操作をかなり快適に変えてしまう。アップルらしい、冴えた切り口といえるだろう。