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盛田 諒の“インタビュー前陣速攻”

大人気『ダンボーバッテリー』世界に挑む大阪のおっちゃん

2015年09月30日 17時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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とにかく品質にこだわった

──はじめてのモバイルバッテリー、開発は大変だったんじゃないですか。

だいぶ走りまわりましたよ。深センのほうでつくってるんですけど、工場を25~26社回りまして。ティ・アール・エイとしてはもともと中国に工場を持ってるから、だいたいのモノづくりというのは分かってたんですけどね。

──いちばん力を入れたのはどこですか?

安全性がいちばん大きかったですね。バッテリーはエネルギーのかたまり。安全性の試験をあらゆる形でやっていかないといけないですから。

──試験以外にも、モノとしてこだわった点がありそうです。

ケースその他に『V-0』という、難燃性がある材質を使うことにしています。火を近づけると燃えますが、火を離すと自然消滅します。中の基板から何から、あらゆる部分がV-0の材質です。去年末からそれにすべて切り替えました。あとはケーブルも問題ですね。最近は自分たちでケーブルも作りはじめました。

──なぜケーブルを?

バッテリー供給容量が0.5mAhか、2mAhかでケーブルはちがうはずですよね。USB Type-Cになるとまた変わる。単純に容量が大きくなればなるほどエネルギーは大きくなる。なら該当するケーブルそのものをつくらないと安全性に問題が出るわけですよ。

──どういう問題ですか。

ケーブルにはmicroUSBがついてますが、非常に小さくて薄いところに4本の線が入っているわけです。ケーブルをポケットに入れたりバッグに入れたりしますが、バッグはゴミの山。microUSBの中にごみが入りますと、電気が流れた時ショートします。ショートするとmicroUSBの先端が280℃くらいまで上がるんです。

──なるほど、ただバッテリー作ってるだけじゃダメなんだと。

バッテリーの中身、セル、安全装置、ケーブル。ACアダプターもある。いちばん安全な商売はケーブルだけ、ケースだけ作ること。危険性がないから。ぼくらもバッテリーばっかり売っていたけど、ケーブルに入らないととんでもないことになると思ったんです。

──納得できる品質に及ばなかったことで、せっかくできあがった商品を全部破棄したこともあったとか。これじゃ儲けるのは大変じゃないですか。

どんな商売もそうですけど、最初は儲からないもんですよ。しばらく経ってから利益が出てくるもんなんです。

──でもcheeroの価格は安いです。インターネット直販にこだわったり、不要な宣伝費を削ったり、コストの削減にもこだわっている面もあるんじゃないですか。

コスト低減はつねに頭にありますよ。流通経費を下げるとか、相当なことをやらないといかん。けど、モノをつくっている以上は責任を持たないといかん。価格はどうあれ売っている以上は安全性をつねに追求しつづけないといけないですから。どんな品物もそうやけど、追求があり、改良があり、次はどないせんといかんと、考えないかん。

──今後はどう開発していきますか。

安全性を考えて、今後はバッテリーセル自体を日本製のパナソニックさんにしようと思ってます。『PowerPlus3』はすでにパナソニック製ですが、今後円筒形セルはすべてメイド・イン・ジャパンのセルに切り替える予定です。

──なぜパナソニックですか?

やっぱり安全性と、コンパクトさですね。同じサイズで2800mAhから3350mAhまでそろっている。おなじサイズの中でもっとも容量の大きなエネルギーができるので、バッテリー界では指折りじゃないかと考えてます。

──競合は中国製バッテリーを使う企業も多く、コスト競争になるとどうしても敵わない場面が出てきます。

コストが高いのはわかってても、日本製を使いたいんです。機械部品やってたとき、中国のことはコストも何もすべてわかってます。それでも日本製のセルでやりたいんです。

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