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業界人の《ことば》から 第161回

社員が想像以上に元気で、自由闊達な企業

デルは思ったよりも品揃えが多い、言い換えれば、広く訴求できていない

2015年09月15日 21時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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今回のことば

 「入社して感じたのは、デルには思ったよりも品揃えが多いこと。言い換えれば、それが広く訴求できていないという反省がある」(デル・平手智行社長)

新社長は、自分で舵を切る「デル」をどう評価したのか

 2015年7月に執行役員副社長としてデル株式会社に入社し、8月1日付けで、代表取締役社長に就任した平手智行氏。日本IBMに入社して以来、約25年間に渡る経験を持ち、直近までは、ベライゾンジャパン合同会社の社長として通信業界においても経験を持つ。

 入社からまだ2カ月と日は浅いが、「デルに入って感じたのは、社員が想像以上に元気で、自由闊達な企業であること。そして、思ったよりも品揃えが多いという点」と笑う。

 デルは、過去8年間に渡って、数多くの企業を買収してきた。

 クライアント、サーバー、ストレージに関連する製品や、各種ソフトウェア、セキュリティソリューションなど、エンタープライスを取り巻く様々な製品、ツール、サービスを一気に揃えてきた。

 「これだけの製品、サービスが揃っていることを、私が気づかなかったということは、まだまだ多くの人が理解していないともいえるだろう。お客様が、気がついていないソリューションを提案できる土壌がデルにはある。もっとアピールしていかなくてはならない」とする。

 ただ、平手社長は、カタログスペックとして、デルの製品、サービスを知ってもらうのでは意味がないとも語る。「お客様の課題解決のための具体的なユースケースを通じて、デルの製品、サービスを知っていただきたい。そうしないとお客様の琴線には触れることができない」とする。

事例と価値提案、課題にこたえなければならない

 平手社長は、自らのこれまでの仕事のやり方を、「お客様と膝をつきあわせてきた」と自己表現する。

 その姿勢はデルの社長となっても変わらない。

 デル入社後の2カ月間で、ユーザー企業、パートナー企業を精力的に訪問。毎日3、4社の企業を訪れたという。

 「これまでのデルが行ってきた活動が、お客様が抱える課題の解決、課題への挑戦に対して適切なものなのか、お役に立っているのか、ご満足いただいているのかということを重点的に聞いた。その点では高い評価を得ていることがわかった」とする一方、「顧客起点で、企業が持つ個別課題をしっかりと解決でき、価値提案が行える企業を目指すことに、さらに一歩踏み出したい」と抱負を語る。

 企業情報システムが複雑化していることは多くのユーザー企業の共通認識だ。

 第3のプラットフォームと呼ばれるクラウド、モバイル、ソーシャルなどの新たな潮流は、企業情報システムに変革を及ぼすものの、依然としてレガシーシステムが企業経営を支えているのも実態だ。

 この両立した世界を、オンプレミスとクラウドによる「ハイブリッド」と表現するITベンダーは多いが、平手社長は、あえて「ダブルスタンダード」と表現する。

 「ダブルスタンダードは、近い将来には収束するだろうが、いまはまだ過渡期。そのために、管理工数やコストの課題、異なるスキルセットをどう共存させるかといった課題もある。それが企業情報システムを複雑化させている理由でもある」だとする。

ソリューションという言葉の意味、広すぎる

 そして、ソリューションという言葉が、広い意味で使われていることにも苦言を呈する。

 「ソリューションを日本語に訳せば、解決策となる。だが、なんにでも効く万能薬のような表現をしているケースが多い。実態をみれば、企業が抱える課題は千差万別。お客様のペインポイントを理解して、そこに最適なソリューションを提供することが必要である」

 デルが持つソリューションのなかには、セキュリティ分野などを中心に、販売が好調な製品、サービスがいくつかある。

 「あるソリューションの引き合いが多いから、ほかのお客様にもこれを提案していくというやり方では、本来のソリューションの意味を見失う。お客様が、なぜそれをやろうとしているのか、そのためにはなにが必要なのかといったことをデルが提案する必要がある」と平手社長は語る。

 続けて、「お客様が目指すゴールを、山登りの山頂に例えるならば、なぜ、いまこの山に登るのか、なぜ、向こうの山ではないのか。そして、東ルートから登るのではなく、今回は、北ルートから登ってはどうかといった提案もできなくてはならない。そのためには、一緒になって、企業が抱える課題の解決手法を考え、最適なものを提案できるパートナーになる必要がある」とも語る。

 その点では、「膝をつきあわせて仕事をする」という平手社長の姿勢は、いまのデルに求められているビジネススタイルといえるのかもしれない。

 「これまでのIT業界は、最先端の技術を活用し、いいものを提供すれば、価値を最大化できると思っていた。だが、複雑化するお客様の課題を解決するには、患部を聞いて、そこに薬を調合しなくてはならない。プロダクトアウトの手法から、顧客起点へと変化しなくてはならない。だからこそ、お客様やパートナーとの対話の時間をもっと多く持つ必要がある」

 これからのデルのビジネススタイルは、「膝をつきあわせた」ものになりそうだ。

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