新型iPhone、iPad Pro、iPad mini 4について知る
「新iPhone端末は“サブスクリプション”になった」――西田宗千佳氏
2015年09月11日 10時00分更新
日本時間9月10日、アップルのスペシャルイベントが開催された。今回の発表に関して、フリージャーナリストの西田宗千佳さんからのコメントが届いたのでご紹介する。
成功すれば新しい家電のビジネスモデルになるかも
iPhone 6sシリーズの出来は安定している。もちろん、細かく触れると、なにか問題が噴出する可能性は否定しない。でも、短時間ではあるが使った印象でいえば、「iPhone 6の洗練版だな」という印象だ。
「じゃあ、買い替えの必要はないんですね」と言われると、なんとも難しい。去年大枚をはたいて(実際、iPhone 6 Plusは、もはやPC並みの価格だ。それだけのハードウエアなのだからしょうがない)買ったばかりの人は、出費を躊躇する場合もあるだろう。なのだが、特に新しく追加された「3D Touch」の操作感は良好で、一度体験するとクセになる。そこに10万円をぽーんと払えるか……という問題が本質なのだ。
そんなことは、当然アップルもわかっている。
鍵は、アメリカ市場向けの施作として発表された「iPhone Upgrade Program」だ。これは、毎月32ドル以上を支払うことで、「その時の最新のiPhone」を常に使うことができるプランだ。フィル・シラー上級副社長は、「各携帯電話事業者に割賦を払っている人もいるだろう」と話した上で、このプランを紹介している。24ヵ月分割で携帯電話事業者からiPhoneを買い、さらに新機種が出た時には「買い替え促進プラン」に乗って買い替えていく人は多い。通信契約とのバンドルで、2年間という長期契約縛りを加えて、我々は今までも、実質的に「iPhoneを毎年変える」ことができた。その見方を変えたのが、iPhone Upgrade Programである。まずはアメリカからスタートするが、「準備ができれば世界で展開したい」と説明されている。
別の言い方をすれば、iPhone Upgrade Programは、ソフトやサービスを「サブスクリプション」で契約するように、ハードウエアも「サブスクリプクション」化するものだ。しかも、契約先は携帯電話事業者ではなく「アップル」。通信事業者との力関係はすでに逆転しており、アップルは強気に出られる。
ハードウエアが成熟し、巨大なジャンプアップが難しくなったなら「安心していつでも最新のものを」提供するスキームに、アップルは突入しつつある。これが成功すれば、家電のビジネスモデルにとって革命的なこと、かもしれない。
西田宗千佳(にしだ むねちか)
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。 得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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