情報の取り扱いが極めて困難な状況
個人が簡単に情報を公開/投稿できるようになった3は、インターネットという技術がわれわれにもたらしてくれた最大級の恩恵である。まさに「すべての人々が情報の発信者になれる」というインターネット黎明期の夢の現実化と言えるものだ。YouTubeやTwitter、Instagramなどの例を挙げるまでもなく、3が新たに誕生させた表現や開花させた才能は数知れない。
しかし、昨今の「ドローン」に対する批判や警戒は、拡大しつつある個人が主役のアップロード文化に対して、次第に圧力の度合いを深めている。少し前に世間を騒がせたリベンジポルノなども、3の悪用による情報犯罪のひとつと言えるだろう。
そして、今後インターネットの存在をほぼ意識しなくなるような情報環境=「ポスト・インターネット」時代において、次第に問題化してくるのは、無意識のうちにデジタル機器から情報を吸い上げられてしまう、4である。
前述したIoTやビッグデータやウェアラブルコンピューターは常にこの危険をあわせ持つ。すでにわれわれは自分に関するどんな情報が、どんなデバイスから、どんな方法でアップロードされているかを完全には把握することはできない。それどころか、情報を得るために自ら進んで位置情報をスマホ経由で開示したりしている。
「吸い上げられてしまう」などと言うと何やらネガティブ一辺倒な印象になってしまう。だが、たとえばカーナビから収集される交通情報にもとづいたビッグデータは、渋滞の緩和といった即効性のレベルをはるかに超えて、災害時の対策立案などにも大いに貢献する可能性を持っている。
企業のマーケティングに利用されるだけであれば声高に異を唱えたくもなるが、防犯や防災、観光をはじめとする地域振興などの公益に資する活用法もあるわけだから、頭ごなしに情報が吸い上げられることを否定するわけにもいかない。
つまり、われわれは自発的な情報のダウンロードである1とアップロードの3だけが肯定的な事象で、目的以外の情報をダウンロードしてしまう2と無意識にアップロードしてしまう4は否定的な要素であると一概には言い切れない情報環境にいるということだ。
(次ページでは、「ウェアラブルで知ることができる新たな情報」
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