自治体とスタートアップをつなごう
ユニマルの今熊真也氏は、資金調達面での不安を口にしていた。
「いまスタートアップで資金調達する企業数は減ってますが、調達金額は増えています。多くの資金を特定の会社が集めている状態です。シード(起業初期)の資金調達が難しくなってきたような印象があるんです。これから地方は盛り上がると思いますが、逆に資金調達は苦労するんじゃないでしょうか」
これに対し、ドーガンの林龍平氏は心配することはないと諭す。「社数が減ってはいるけど、某ニュースアプリとかゲームとか何十億円の会社が増えてきて、一部のユニコーンが出てきて増えたかな、というところでは」と冷静に返していた。
「社数にこだわらなくてもいいんじゃないかと。九州では福岡が中心になり、これから鹿児島もここ(さくらハウス)がハブになってきますよね。悲観する必要はないですよ。ベンチャーキャピタルも大きなファンドが出る一方、シード・アーリーに特化した投資家やエンジェルも増えてきてるので、追い風は吹いてます」
スタートアップカルチャーそのものが盛り上がる一方、自治体の理解が追いつかないことも課題になっている。
「今までの市町村支援は“スタートアップ以外”への支援が中心ですよね。スタートアップの資金調達を理解している中小企業診断士も少ないです。地方だと、コンビニやマクドナルドの起業(フランチャイズ・のれん分け)を支援できるのは多くても、スタートアップを支援するところはまだ少ないと思います」
さくらインターネットの田中社長はそう話す。
トーマツベンチャーサポートの香月稔氏は、自治体が考える施策の1つに当たり前のように“スタートアップ”が出てくるような働きかけが必要だと熱い。
「右肩上がりで成長してどうこう、という話は聞きますが、スタートアップは新しい価値を作らないといけない。起業家が何かやらかした、という悪循環に流れると日本経済にとってよくない。ただのブームとして終わらせないため、医療や教育と同じように“当たり前”に考えられる施策にならないといけないんです」
鹿児島は、紡績・ガラス・写真・印刷・電信・食品・医薬など近代産業の礎を築いてきた島津斉彬公が生まれた地でもある。現在の自治体が、新規事業を育成する“集成館”のように、スタートアップの実験場を支援してくれたら。
地方自治体には、都会にとられる労働力=若者のUターンを促したいという思いがある。この思いにスタートアップを結びつけるにはどうすればいいか。