屋内位置情報分析やNoSQL DBの機能追加、基幹システムとの連携拡大など
企業モバイルアプリ基盤「IBM MobileFirst Platform」強化
2015年08月06日 09時00分更新
日本IBMは8月5日、企業が自社開発するモバイルアプリ向けの統合基盤「IBM MobileFirst Platform」において、機能強化や価格改定を発表した。発表会では、企業ビジネスにおけるモバイルアプリ開発が直面する新たな課題や、IBMとしての戦略などが語られた。
屋内位置情報に基づく行動解析、NoSQL DBが機能追加
昨年6月に国内提供を開始したIBM MobileFirst Platform(旧称:IBM Worklight Platform、関連記事)は、企業向けのモバイルアプリ開発/実行/管理プラットフォームである「MobileFirst Foundation(旧称:Worklight Foundation)」に、アプリ品質に関するフィードバック機能、脆弱性の検証機能を付加した統合基盤製品群。
今回は新機能として、アプリが取得した屋内位置情報に基づく行動解析機能「Presence Insights」と、センサーなどから取得したビッグデータを格納するためのNoSQLデータベースサービス「IBM Cloudant」が追加された。またMobileFirst Foundationにおいても、企業が保有するバックエンドシステムとのデータ連携機能などが強化されている。
なお、オンプレミス導入のほか、Presence Insightsなどの機能/サービスは「IBM BlueMix」PaaSからも提供される。Platform Foundationでも、今後Dockerコンテナでの提供を予定しており、クラウドへの展開も容易になるという。
ライセンス料金体系として、従来の「アプリ単位」に加えて、新たに「アドレス可能デバイス単位」での料金も用意された。参考価格(税別、200デバイス)は135万円となっている。
企業のモバイルアプリ開発には「4つの新たな課題」がある
同日の発表会において、日本IBM 執行役員 クラウド事業統括担当の小池裕幸氏は、顧客と対面する社員のデバイスがタブレットやスマートフォンになり、企業ビジネスの「デジタル化(Digitalization)」やビジネスの最前線におけるモバイルを通じた意思決定も必要となるなかで、企業におけるモバイルアプリ開発には「4つの新たな課題」が生まれていると説明した。
特に、企業が複数のアプリを開発し、継続的に機能改善を図っていく際の開発効率やスピード、また基幹システムなどバックエンドに接続しデータを取り扱う際の高いセキュリティなどを担保するためには、MobileFirst Platformのようなプラットフォームが必須であることを強調した。
「開発者は、バックエンドシステムとの接続やセキュリティといった困難な問題から解放されたいと考えている。MobileFirst Platformの導入により、開発やデザインなど、ほかの作業に時間をかけて専念できるようになる」(小池氏)
また日本IBM クラウド事業 クラウド・テクニカル・ソフトウェアの佐々木志門氏は、2012年からこれまでのMobileFirst Platformの機能進化について紹介して。昨年から今年にかけて、フロントエンドUIを改善するための「Xamarin」「Ionic」などのフレームワーク対応、オフプレミス(クラウド)上のデータアクセス、そしてビーコンやWi-Fiによる屋内位置情報の分析といった機能が追加されている。
「今回、価格体系も変更されてスモールスタートが可能になっている。また、アプリ開発者だけでなく運用者、プログラマー、オーナー、ユーザー、すべてのステークホルダにとって、アプリ品質やセキュリティの向上というメリットをもたらす」(佐々木氏)
なお発表会には、MobileFirst Platformの導入企業として、セイコーエプソン ウエアラブル機器事業部 S企画設計部 部長の加納俊彦氏も出席した。同事業部では、高精度なセンサーデバイスを活用したコンシューマーアプリを開発しており、「高精度なデータをユーザーにどう『情報』として見せるのか」がポイントになるという。
加納氏は、MobileFirst Platformを導入し、iOS/Androidアプリのコードを部分的に共通化したことで「アプリの開発期間をざっくり3割くらい短縮できた」と述べ、その結果、UIデザインなどの重要な作業に時間を費やせたとメリットを語った。