各クラスの優勝マシンもバラエティー豊か
スーパー耐久はFIA-GT3マシンを使うST-Xクラスから、1500ccのST-5クラスまで全6クラスがあり、それらが一斉に同じコースを走る、いわゆる混走のレースである。
片岡龍也選手が乗る「REAF REAL ESTATE KiiVA BMW」、実は昨年のSUPER GTチャンピオンマシン「グッドスマイル 初音ミク Z4」そのもの。GOODSMILE RACINGからスーパー耐久のために貸し出されているとのことだ。
ST-2クラス優勝は「DAMD MOTUL ED WRX STI」、ST-3クラス優勝は「DENSO Le Beausset RC350」と、すでに紹介させていただいたが、ST-4クラスは新しいトヨタ 86勢と、古いが開発され尽くしたホンダ勢がぶつかり合い、ホンダS2000「孚海國際×SPOON S2000」が優勝。
ディーゼルデミオも出場するST-5クラスは、飛びぬけた性能でホンダ フィット3が強さを誇っているが、その中で開幕戦に優勝した「BRP★J'SRACING フィット」が富士でも優勝した。
改造範囲が厳しいから面白い!
それでは、スーパー耐久に出場するマシンは市販車とどこが違うのか?
ST-Xクラスに出場するFIA-GT3マシンは市販レーシングカーという規定のために、メーカーが販売した状態から一切改造ができない。SUPER GTと違ってタイヤも主催者指定のサイズ、コンパウンドのものしか使用できない。
その他のクラスは、市販車をN1規定という車両規定に基づき改造される。N1規定はスーパー耐久のほかに、もてぎJOY耐などでも採用されている、レース専用車としては一般的な規定だ。ディーゼルデミオの例を見ながら説明しよう。
エンジンは、基本的に手を加えることができない。オーガナイザーであるスーパー耐久機構( (S.T.O.)が特認するパーツに限って導入できる。また、変速機もその市販車モデルのラインナップにないものは基本的に使用が認められない。例えば、市販車は3ペダルHパターンのマニュアルミッションである場合、レース車両に2ペダルシーケンシャルミッションは使用できない。
サスペンションは交換可能だが、最低地上高の規定がある。また、ブレーキはパッドのみ交換可能。デミオの場合はリアブレーキがドラムなのでディクセルの特製レーシングブレーキシューを使用する。また、ディファレンシャルギアはL.S.Dに変更することができる。タイヤはレース専用タイヤで、晴れればスリックタイヤとなる。
車内はロールケージが張り巡らされており、レースに必要ない装備はすべて外される。メーター類の交換は可能で、デミオは既存のエンジン回転系の他に液晶表示の集中メーターを装備する。
なお、ST-5クラスの場合、燃料タンクは45リッターの安全タンクに換装することが義務付けられている。
ボディーの外装は、車検が通る範囲でエアロパーツの取り付けは可能。それ以上のオーバーフェンダーや全長が極端に変わるスポイラー類は禁止だ。また、ボンネットも車検が通るレベルの強度を保っていれば交換が可能である。
デミオの場合、FRP製のオリジナルボンネットを開発し、富士戦で初搭載した。ちなみに7万6000円(税別、取付塗装費別)で市販されている。
エンジンオイルは銘柄、粘度などに規制はない。デミオはディーゼル用ではなくガソリンエンジン用のレーシングオイルを使っていた。
オイル供給元である和光ケミカルの方にうかがうと「レーシングディーゼルというのが未知数なので、このオイルを使ってレースを走ったあとに、使用済みオイルを解析するという作業の繰り返しなので、このオイルが正解というわけではない。ただ効果が見られることは確か」と答えてくれた。公道走行用にはディーゼル専用の指定粘度のオイルを入れてほしいとのことだ。
一通りご覧いただいてわかるのは、レース仕様だからといって速くするわけではなく、その車の持つ性能を最大限に発揮することを基本理念として、スーパー耐久のマシンが製作される。だからこそ身近なクルマで興奮するレースを見ることができるのだ。
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