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情報の取り扱い説明書 2015年版 第6回

個々の編集力が求められる

アップルも情報遮断の時代、情報をうまく受け取る4つのポイント

2015年07月14日 09時00分更新

文● 高橋幸治、編集●ASCII.jp

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「より多数に」「より広範に」とは異なる思想のSNS

 最後に繰り返しになるが、情報過多の時代の情報デザイン術の真髄は「自分というメディアには、いま、いったいどんなコンテンツが必要なのか?」を見極める以外にない。

 かつてパーソナルコンピューターが「個人の創造性を増幅するための装置」として登場したように、コンピューティングの主体は常に自立した個人である。情報は幻惑されたり束縛されるものではなく、あくまでも思考の材料として活用するものだ。その際の情報の選別の指針は「自分というメディアの編集方針」を、受信者自らが設定するしかない。

 これが曖昧な状態でむやみやたらに情報を摂取したところで、4で述べたように「自分の興味や関心が多少なりとも明確になっていないと、情報のハイパーリンクもセレンディピティーも起こらない」。

 冒頭でAppleが「iPhone」や「iPad」に標準で搭載する「Safari」の次期バージョンに、広告の非表示機能を組み込むらしいという話を紹介したが、われわれの側が情報過多への対処/対応を進める一方で、企業の側でも「情報の遮断」もしくは「情報の軽減」に重点を置いた製品やサービス、機能をこれまで以上に真剣に考え始めるはずだ。

 ソーシャルメディアの世界でも、TwitterやFacebookとは異なるコンセプトのサービスが、今後ますます登場してくるだろう。

 例えば米国の大学生たちの間で人気を博している「Yik Yak」は、半径10マイル圏内のユーザーの投稿だけが閲覧できるソーシャルメディアだ。

 特定地域に根差したサービスということでいじめの温床になっているという声が上もっており、今後、果たして「Yik Yak」がメジャーな地位を獲得できるかどうかはわからないが、「より多数に」「より広範に」というベクトルとは異なる情報への姿勢を打ち出している点で、非常に興味深い試みとは言える。人間と情報との関係は今後もますます変容していく……。

米国の大学生たちの間で使われているロケーションベースのソーシャルメディア「Yik Yak」の紹介動画。特定のユーザー間における「フォロー」といった概念が存在せず、タイムラインには半径10マイルにいるユーザーのつぶやきが表示される。ロケーションベースのデメリットとして特定個人へのいじめを助長しているといった非難も多く、まだまだ順調な成長軌道に乗っているとは言い難い


著者紹介――高橋 幸治(たかはし こうじ)

 編集者。日本大学芸術学部文芸学科卒業後、1992年、電通入社。CMプランナー/コピーライターとして活動したのち、1995年、アスキー入社。2001年から2007年まで「MacPower」編集長。2008年、独立。以降、「編集=情報デザイン」をコンセプトに編集長/クリエイティブディレクター/メディアプロデューサーとして企業のメディア戦略などを数多く手がける。現在、「エディターシップの可能性」をテーマにしたリアルメディアの立ち上げを画策中。本業のかたわら日本大学芸術学部文芸学科、横浜美術大学美術学部にて非常勤講師もつとめる。

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