屋外でも本格的な音を楽しめる
オーバーヘッド型モデルを4モデル厳選!!
ヘッドフォンもまた、ハイレゾ再生の盛り上がりの影響もあって、屋外での使用も視野に入れたオーバーヘッド型モデルの人気が高まっている。
大口径ユニットを使用できるため音質的にも有利だし、密閉型ならば音漏れにより電車内などで周囲に迷惑をかける心配も少ない。
そんな人気の高まりを反映してか、各社から実力の高いモデルが登場してきている。特に2~3万円ほどの高級モデルは競争も激しくなっており、その分、各社とも気合いの入ったモデルが投入されている。
玉虫色の超多層フィルムが美しい
透明感のある澄んだ音がするパナソニック「RP-HD10」
オーバーヘッド型ながらもハウジングは比較的コンパクトで携帯性も意識したデザインのパナソニック「RP-HD10」(実売価格2万円前後)。しかし、耳をすっぽりと覆うアラウンドイヤー型で遮音性も十分優れる。
ハウジング内に内蔵されるドライバーの振動板は、装着時は見えないのがもったいないくらい艶やかな玉虫色に輝いているのがユニークだ。これは数百層にも積層された超多層フィルムが不要な振動の影響を低減しているという。
このほか、ハウジングとアームバンドの接合部分は、一般的な垂直方向の調節に加えて、水平方向の調整も可能な機構を備えている。これらを微調整することでよりフィット感の高い装着が可能だ。
試聴はすべて、Astell&Kernの「AK120II」を再生プレーヤーとして聴いた。RP-HD10の特徴はにごりのない澄んだ音。中高域の鮮明でしなやかな鳴り方は、これぞハイレゾ!! と言いたくなるような高解像感がある。
中低域や低音はタイトな表現で細身にも感じるが、力感はしっかりとしていて、ひ弱な印象にはならない。オーケストラでは各楽器の音を粒立ちよく再現するし、音場感もまずまずだ。
ジャズなどでのエネルギー感たっぷりのドラムやベースを聴くと、パワー感よりもリズムのキレや弦を弾く感じのニュアンスを濃厚に伝えるなど、端正で女性的な美しさが際立つ音にも感じる。
「Ring Your Bell」では、ドラムの刻むリズムはややおとなしい印象になるものの、弾むようなリズムやギターのカッティングなどもシャープに描く。ボーカルのエコー感のような細かい音の再現も丁寧なので、音数が増えてきてもガチャガチャとした感じにならず、整然ときれいに描き出す。
マッシブなパワー感を求める人には物足りなさもあるが、ボーカルの美しさを堪能したい人や、情報量豊かな音をつぶさに感じとりたい人にはなかなか魅力的。パナソニックブランドよりも、テクニクスブランドにした方がふさわしいとさえ感じる実力だ。
モニタータイプの定番モデル
充実した低音の力感が大きな魅力のソニー「MDR-1A」
今や中高級のオーバーヘッド型としては定番的な存在になりつつあるソニーの「MDR-1A」(実売価格2万5000円前後)。LCP(液晶ポリマー)にアルミニウム薄膜をコーティングした振動板を採用し、再生周波数帯域は3Hz~100kHzのワイドレンジを実現している。
このほか、別売のケーブルや対応したポタアン(PHA-3)を使用してバランス接続も行なえるなど高音質トレンドにもしっかりと対応している。立体縫製のイヤーパッドは下側が膨らんだ形状で、装着感というかホールド感が良好でアラウンドイヤー型ながら重さを感じさせない軽快さがある。
クラシックを聴くと、充実した低音に支えられた堂々としたスケール感を感じられ、コントラバスの太い弦の音色の厚みがしっかりと出て、リッチな印象の演奏になる。
中高音はスムーズで、木管や金管楽器の音色をナチュラルな音色で描き出す。
特徴的なのは低音の再現だが、いわゆる重低音タイプのモデルとは違って量感に頼った鳴り方をせず、低音域の音階も描き分ける解像感を備えている。そのため、ジャズのパワフルなリズムもアタックのエネルギー感やキレ味の良さを感じられ、テンションの高さがよく伝わる。
Kalafinaの「Ring Your Bell」は、力強いドラムが曲調をぐっと盛り上げ、情熱的な再現になる。左右のセパレーションが優れるのか、音場の広がりもよく出るし、3人のコーラスもそれぞれのパートをきちんと再現しながら、それらが溶け合ったハーモニーの美しさも丁寧に描く。
ソニーらしいカチっとした音が完成度を高めていたようなバランスのよさで、ジャンルを問わず楽曲の持ち味を感じられるモデルだ。
(次ページに続く、「オーディオテクニカ ATH-MSR7&ソニー MDR-Z7」)
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