長年の高音質技術を凝縮! 忠実感の高い音を再現
オーディオテクニカ「ATH-MSR7」
ソニーのMDR-1Aの好ライバルとも言えるのが、オーディオテクニカ「ATH-MSR7」(実売価格2万9000円前後)。アラウンドイヤー型の密閉モデルである点や価格やサイズ感も似通っており、どちらを選ぶべきか迷う人もいるはず。
ドライバーユニットの設計は、駆動力の向上を目的とし、専用に開発した振動板やボビン巻のショートボイスコイルなどを採用。ハウジングの振動を抑制するレイヤードメタル構造など、これまでのオーディオテクニカの高音質のノウハウを結集して完成したモデルだ。
その音はずばり言ってしまえば辛口の表現。ニュートラルな特性で色づけの少ない音調だが、膨大な情報量で音楽を再現する。録音のいいところも悪いところもストレートに出す正直なサウンドだ。
クラシックでは、ステージの見通しのよさを感じさせる表現で、音の配置も整然としている。緻密な鳴り方だが、決して小ぢんまりとしてしまうことはなく、雄大なスケールを感じさせるダイナミックさがある。まさに4Kテレビのような高解像感のある音だ。
「Ring Your Bell」は、音の充実度、密度感の高い再現で、歌い手の技量の高さや録音のよさを感じさせる。情熱的に盛り上がっていくような熱気はやや控えめだが、実体感のあるリアルな感触がある。
低音感もかなり下の帯域までよく伸びるが、決して無理矢理に出している感じはなく、引き締まったタイトな鳴り方だ。ただし、アニソンの場合、曲によっては情報量の多さが災いしてガチャガチャと少々やまかましい感じになるなど、録音の質や歌い手の技量が露呈してしまうようなこともあった。モニター的な厳しさとも言えるが、このあたりは自分の好きな曲を聴いて感触を確かめるといいだろう。
70mmの大口径ユニットを採用したハイエンドモデル
ソニー「MDR-Z7」
オーバヘッド型の最後となるのは、ソニーの最上位モデルとなる「MDR-Z7」(実売価格6万円前後)。ヘッドフォンのドライバーユニットとしては最大級となる70mmの大口径ユニットを搭載したモデルだ。
振動板の素材はLCP(液晶ポリマー)にアルミニウム薄膜をコーティングしたもので、MDR-1Aと同じ。大口径サイズとなっていることが大きなポイントとなる。
低音域の向上というより、振動板が大きくなることで音の波面が平らになり、スピーカー再生に近い感触になるという。下側が膨らんだ立体縫製のイヤーパッドは、耳を包み込むように内側へ倒れ込む形状として装着感と気密性を高めている。
こちらも、MDR-1Aと同じく別売のケーブルや対応のポタアンなどを使用することでバランス接続での再生も可能になっている。
その音は、MDR-1Aのカチっとした感触とはかなり印象が異なる。メリハリの効いた粒立ちのよさよりも、ステージ全体を見渡しているような感じになる。個々の音のディテールがさらに増し、情報量も増えているため、薄く散漫に広がっているのではなく、中身のみっちりと詰まった凝縮感がある。
音の感触は柔らかく丁寧で、多少キレのよさや鋭さを抑えているように感じるが、厚みのある音像は大小の音量の変化もダイナミックに描き出され、充実感と力強さがある。
ボーカルにも声だけでなく喉があってお腹があるという実体感があるし、滑舌や余韻の再現が丁寧なこともあって、豊かな表現力がしっかりと伝わる。
「Ring Your Bell」も、3人の声のハーモニーを情感豊かに再現するし、ちょっと聴くとおしとやかな音なのだが、ぐっと盛り上がってくるような高揚感がしっかりと出る。情報量の豊かな再現なのだが、ストレートに音を出すのではなくうまくまとめて聴き応えのある音に仕上げるような上手さを感じる。
このあたりはソニーらしい巧みなバランスだ。ほかのアニソンを聴いてもガチャガチャした印象にならないし、悪さを目立たせずに気持ち良く楽しめる。高性能なだけでなく、懐の広さも備えた器の大きなヘッドフォンだ。
(次ページに続く、「お買い得感のあるエレコム EHP-CH3000」)
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