CG業界の市場占有を狙うも
DirectXにお株を奪われる
そもそもCineFXはなんのために導入されたのか? というと、公式の理由は描画品質を高めるとともに描画用のプログラミングの自由度を増やすことだが、要するにゲームだけではなくCGの市場にもっとGPUを売りたい、という意向が強く働いていた。
この頃のGPU業界(といっても事実上ATIとNVIDIAの2社で、これに辛うじてS3やインテルがしがみ付いていた程度だが)は、より高性能・高機能化が進んでいくGPUをPCのグラフィック向けだけでは開発費が回収できない、あるいは特にPC向けのハイエンド向けグラフィック市場が段々規模が縮小していく可能性があることを危惧していた。
PCのグラフィック以外の用途を真剣に模索している最中であり、CineFXはこうした「PC以外の用途」に向けた布石と考えればいい。
ところが幸か不幸か、DirectX自身も急速に描画クオリティーを上げてしまったことで、CineFXのメリットはどんどん薄れる方向に行った。
有名なところでは、例えば2002年に発売されたAnimusicという作品がある。これを製作したのはAnimusicという会社(元はVisual Musicという会社で、1995年に改称された)で、SIGGRAPHにもしばしばショートフィルムを提供している。
このAnimusicに含まれているPipe Dream(下の動画)は比較的有名なのでご存知の方も居られよう。
このPipe Dreamを含むAnimusicの作品は同社の専用ソフトウェアで開発されたものだが、それから2年後の2004年には、ATIがRadeon 9700 Pro上でAnimusicをリアルタイムレンダリングできるデモプログラムを配布するに至っている。それが下の動画だ。
見比べてみると、微妙に表現が及んでいないところも目に付くのだが、DirectXベースでもCG作品クオリティーのものがリアルタイムレンダリングできる、ということが露骨に示された例である。
結果的に、DirectXベースのレンダリングがゲーム以外でも使われ始めるようにもなったが、CineFXに関してのみ言えば空振りに終わったというべきか。ただCineFXとCgの実装は、この後のCUDAの実装に役に立つことになる。
→次のページヘ続く (CUDAの誕生)
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事
-
第868回
PC
物理IPには真似できない4%の差はどこから生まれるか? RTL実装が解き放つDimensity 9500の真価 -
第867回
PC
計算が速いだけじゃない! 自分で電圧を操って実力を出し切る賢すぎるAIチップ「Spyre」がAI処理を25%も速くする -
第866回
PC
NVIDIAを射程に捉えた韓国の雄rebellionsの怪物AIチップ「REBEL-Quad」 -
第865回
PC
1400WのモンスターGPU「Instinct MI350」の正体、AMDが選んだ効率を捨ててでも1.9倍の性能向上を獲る戦略 -
第864回
PC
なぜAMDはチップレットで勝利したのか? 2万ドルのウェハーから逆算する経済的合理性 -
第863回
PC
銅配線はなぜ限界なのか? ルテニウムへの移行で変わる半導体製造の常識と課題 -
第862回
PC
「ビル100階建て相当」の超難工事! DRAM微細化が限界を超え前人未到の垂直化へ突入 -
第861回
PC
INT4量子化+高度な電圧管理で消費電力60%削減かつ90%性能アップ! Snapdragon X2 Eliteの最先端技術を解説 -
第860回
PC
NVIDIAのVeraとRubinはPCIe Gen6対応、176スレッドの新アーキテクチャー搭載! 最高クラスの性能でAI開発を革新 -
第859回
デジタル
組み込み向けのAMD Ryzen AI Embedded P100シリーズはZen 5を最大6コア搭載で、最大50TOPSのNPU性能を実現 -
第858回
デジタル
CES 2026で実機を披露! AMDが発表した最先端AIラックHeliosの最新仕様を独自解説 - この連載の一覧へ











