Beats 1という面白い可能性
Apple Musicの3つの機能の1つとして紹介されたのが「Beats 1」というラジオです。これはiTunes Radioのように音楽から自動的に選曲をするストリーミングとは違う、より既存のラジオのような構成を目指します。
ロサンゼルス、ニューヨーク、ロンドンを拠点に24時間365日放送されるグローバルのラジオサービス。音楽のセレクトにはZane Loweがロサンゼルスから、Ebro Dardenがニューヨークから、そしてJulie Adenugaがロンドンから参加し、その他にもインタビューやゲストトークなど、世界の音楽で何が起きているかがわかるそうです。
拠点としては米国と英国の2ヵ国しかなく、できればアジアに1拠点あるとよりコンセプトとして完成されていそうな気もしますが、1つのステーションが世界をカバーするというアイディアは面白いですね。
もちろん、彼らのセレクトが好みに合うかどうかというそもそもの問題もありますが、世界中のApple Musicユーザー全員が、同じセレクションにアクセスする可能性があるわけです。
世界のトレンドがこの3都市だけで決定されているとは思いませんが、日本人としては、彼らが今何を見ているのか、ということを知る1つの「窓」にはなるように思います。
たとえば日本でもApple Musicが始まれば、ラジオではありますが、サンフランシスコの筆者を含む人々と、東京の人々が同じ曲のセレクトを聴くという状況が生まれるわけです。
あるいは同じ都市内でも、Beat 1リスナーは同じ曲を聴いている可能性があり、電車に乗っている隣の人のヘッドフォンの音漏れから会話が始まるかもしれません。
パーソナル化によって多様化が進んだ一方で、「表現としての選曲」に対して、より多くの人々が目を向けるかも知れません。フロアにいる目の前の人だけでなく、世界中の人々を楽しませる、というDJにとっての新しいプレッシャーもあるでしょう。
Apple Musicが世代や好みによって分断された音楽の世界それぞれに、等しくインパクトを与えるとは思いません。ただ、よりもどしも含め、何らかの気づきの波紋を与える可能性は、大いにあるのではないか、と思いました。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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