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ネットワークの未来を描く「Interop Tokyo 2015」レポート 第8回

エンタープライズネットワーク統括クリス・スパイン氏インタビュー

シスコが考えるビジネス資産として活きるネットワークとは?

2015年06月15日 14時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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エンタープライズネットワークの需要は、ビジネスの生産性向上やセキュリティ面に大きく舵を切りつつある。Interop Tokyo 2015でも講演した米シスコのエンタープライズ インフラストラクチャ&ソリューショングループ 担当副社長 クリス・スパイン氏に新しいエンタープライズネットワークについて聞いた。

複雑性を排除しなければ革新的なプレイヤーに勝てない

 クラウドやIoT/IoE、UC(Unified Communication)への取り組みが目立つシスコだが、同社のビジネスの本丸にあたるエンタープライズネットワークの事業も相変わらずさまざまな革新が進んでいる。こうした革新をもたらす背景としては、Amazon.comやUBER、Spotify、Square、Googleなど革新的なプレイヤーによる攻勢に対抗しなければ、既存の企業は生き残れないという強い危機感がある。

米シスコ エンタープライズ インフラストラクチャ&ソリューショングループ 担当副社長 クリス・スパイン氏

 スパイン氏は「デジタル世代のプレイヤーの登場で、消費行動が大きく変わってきた。私はAmazonの店員と会ったことはないが、彼らは私がなにに興味持っているのかわかっている」と語る。こうした新しい企業の革新性は、何十年・何百年も歴史を持っている企業を一気に破壊してしまう。スパイン氏は「(IT業界大手のシスコですら)ホワイトボックスのネットワークにやられてしまうかもしれない」と語る。

 こうした中、エンタープライズビジネスでの減速要因になってしまうのが、ネットワークの「複雑性」という課題だ。サイロ化した運用管理、ビジネスのスピードに追いつかない固定的な構成、繰り返しと手作業と多いコンフィグといった複雑性は、セキュリティ面での脆弱性につながってしまう。こうした課題に対して、シスコは「シンプル」「オープン」「俊敏性」「セキュリティ」という観点で、ネットワークをビジネス資産として活用できるようにしていくという。「IT部門をイノベーターにすることがシスコのエンタープライズネットワークの戦略になる」(スパイン氏)。

無線LANはユーザー向けで、有線LANはIoTに向く

 シスコが掲げるビジネス資産として活用できるネットワークとはなにか? スパイン氏は無線LANの活用でいくつかの事例を挙げる。

 たとえば、あるテナントビルではWi-Fiの利用環境を見える化することで、大きな生産性向上を実現できたという。「一般的にオフィスの稼働率は決して大きくない。これを見える化することで利用率の向上を図ることができる」(スパイン氏)とのことで、モバイルデバイスの利用にあわせて通信を最適化できた。シスコの無線LANソリューションでは導入もIT部門なしでエンドユーザー自身が完了まで行なえる。エンドユーザーがデバイスを無線LANに接続し、認証を完了すると、自動的にMDM/MANと連携。ビジネスアプリケーションのダウンロードやパフォーマンスの最適化まで一気通貫で行なえるという。

 また、顧客満足度の向上やオムニチャネルの展開によって、売上を向上することも可能だ。「ある大手ホテルチェーンでは無線LANを見える化することで、お客様やスタッフの位置についての洞察を得ることができた。結果として、顧客満足度を大きく向上し、収益も20%増加させることが可能になった」(スパイン氏)。さらにロケーションサービスやID管理サービスを活用することで、空席のあるレストランやアトラクションを顧客に提供したり、スタッフの配置を最適化し、より優れたサービスをお客様に提供できるようになる。まさにビジネスにつながるネットワークと言えるだろう。

 シスコはエンタープライズのニーズを満たすべく、継続的に製品のアップデートを続けている。最新の製品としては最大1.3Gbpsの伝送速度を実現するIEEE802.11acのWAVE2対応のAironetの製品群が挙げられる。スパイン氏は、「WAVE2は複数のデバイスに同時にアクセスできる最初の世代だ。デバイスの高密度が実現できる」とアピールする。

Interop Tokyo 2015で披露された最新のAironet AP群

 最新のワイヤレスコントローラーでは、まず拡張性を大幅に向上。5520では最大2万クライアント、8540では最大6万4000のクライアントをサポートする。アプリケーションを特定化することで、通信を優先したり、リミットをかけることが可能。また、Aironet 1850は従来機種に比較して、性能も2倍に向上し、カバレッジも拡大。ビームフォーミングの活用により、クライアントのパフォーマンスや電力の利用効率が向上できるという。

 もちろん、これにあわせてバックエンドにあたる有線側のスイッチも拡充し、新たに最大48ポートの10Gbpsの「Catalyst 3850 10G Fiber」と40Gbpsのアップリンクを備えた「Catalyst C6840-X」を投入する。

 スパイン氏は「ユーザーデバイス自体がWi-Fi対応になっているので、エンタープライズネットワークが無線LANにシフトしているのはグローバルのトレンドだ。しかし、今後はセンサーやビルオートメーション、カメラロボットのデバイスなどIoTもつながってくるので、有線LANの需要も大きい。ケーブルは“ユーザー”から“デバイス”にその接続先を変えていくだろう。非常に興味深い」と語る。

(次ページ、ACLでのコントロールからリアルタイムな異常検知へ)


 

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