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価格・機能・拡張性、そして音質、すべてが常識を逸脱

Astell&Kern AK380は、色々な意味でDAPの概念を変える

2015年06月12日 15時00分更新

文● きゅう/ASCII.jp

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ただの再生だけではない、オプションとの連携でさらに用途が広がる

専用オプションとして用意される予定のクレードルとCDプレーヤー。

 外観上の違いとしては、背面右上隅ににネジ穴がひとつ、底面に4ピンの新端子があることが分かる。どちらも専用オプションを接続するためのもので、発表会ではオプションのヘッドフォンアンプ(HPA)や、クレードル、そして外付けのCDプレーヤーも紹介されていた。ネジはHPAの接続用。4ピン端子はバランス対応の音声出力だ。

 AK240を自宅のアンプやスピーカーと接続して、据え置き中心の再生を楽しんでいるユーザーも一部いるようだが、クレードル接続時にはXLR出力が可能になるので、ハイエンド機やスタジオ機材と組み合わせることができる。このサイズでもネットワークプレーヤーとして十分な機能・音質を備えており、ホームオーディオとしても活躍しそうだ。

ホームボタンは画面上のボタンではなく、タッチセンサーに変更。

底部に4ピンアナログのバランス用出力を備えている。クレードル装着時に機能。

背面上隅に用意されたネジ穴はオプションとの接続用だ。

写真のヘッドフォンアンプがしっかりと固定できる。

この鮮烈さを体験すると、AK240ですら味気なく思えてくる

 それでは音質をチェックしてみよう。

 試聴用のヘッドフォンはゼンハイザー「HD25-1 II」を使用。ORBの「Clear force HD25/HD650 Blanced」にリケーブルし、φ2.5mm4極のバランス駆動で再生している。手持ちの「AK240」と比較した。

 ある程度予想はしていたが、やはりAK240との差はすべてにおいて圧倒的だった。AK240ユーザーとしては少々悲しいが、さらに上質のサウンドが実現されたこと自体は歓迎すべきだろう。

 一聴して感じるのは、サウンドの切れの良さ。圧巻の解像度で、音の見通しがよく、弦や打楽器なども切れよく立ち上がる。地を這うような低域からすっと抜けていく高域まで、AK240以上にワイドレンジでHi-Fi的な表現が可能となっている。

 そして何より、単純な音数の多さとか見通しのよさだけでなく、静寂感の表現も秀逸だ。これはノイズフロアが低く、無音とそれよりほんの少しだけ大きな弱音との対比なども的確に表現できるためではないかと思う。これによって埋もれがちな音のディティールも的確に前に出てきて、より豊かに演奏のニュアンスを伝えるのだ。

 残響やリバーブの表現も巧み。AK240でもバランスが整いくっきりとした音像があるのだが、直接的な音を聞いている印象が強い。一方、AK380ではホールやスタジオの壁や天井に、音が複雑に反射した“響きそのもの”を聞いているような感覚を味わえる。

 実世界で人間が聴くのは直接音ではなくこの響きだから、どちらがリアルかは言うまでもないだろう。結果として、音楽が演奏されている場に立ち会っているような感覚が得られる。

 正直、筆者にとっては、ある意味、危険な存在だ。この音を体験してしまうと既存のプレーヤーには満足できないのではないかと思えてくるからだ。実際、AK380を聴いた後にAK240を聴くと、どこか味気ないというか、音の輪郭は的確になぞってはいるが、そこに込められた感動や心情がスパっと抜け落ちてしまっているような物足りなさがあるように思えてしまった……。

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