ヒューレット・パッカード(HP)は6月8日、シンガポールにてアジア太平洋地域の報道関係者を集めた「HP PPS Innovation Day」を開催。最新PC、大規模業務向けから家庭向けまでの各種プリンターの製品紹介を行なった。
イベント名のPPSは「プリンティング・パーソナルシステムズ」の略だ。HPは、エンタープライズ事業の「Hewlett-Packard Enterprise」、プリンター・PC事業の「HP Inc.」に分社化するが、PPSは後者に移行する部門。本イベントは、来たるべきHP Inc.の製品内容を紹介する催しとなった。
手でパーツを動かして作品を作るPC
「HP PPS Innovation Day」レポートの第1回は、イベントの中で関心を集めたSprout by HPを紹介しよう。マットに投影された画像を手で操作することで画像や動画の編集が行なえ、さらに“バーチャル試着”にも使える、SFチックな操作システムを搭載したHPの一体型PC「Sprout by HP」。実際にテイラーやタトゥーアーティストが、このSprout by HPを使って作品を作っているという。
Sprout by HPは、10点タッチ対応23インチ液晶の一体型PCに、プロジェクター、高解像度カメラや深度センサーを組み合わせたキャプチャーユニットを追加した製品。
手前に置いた専用タッチマット(20点タッチ対応静電容量式マット)にプロジェクターで映像を投影し、タッチマット上でのユーザーの手の動きをキャプチャーユニットで読み取って、投影した映像を動かす仕組みだ。
キャプチャーユニットは手の動きの検知だけでなく、タッチマットに置いた物体をスキャンして取り込む機能も持つ。
取り込まれてタッチマットに投影されたパーツは、手で触って移動させたり、拡大/縮小などが行える。あるパーツの上に別のパーツを移動して、重ねることも用意で、指やペン、キーボードを使って文字を書き込むことも可能だ。
これらの機能を組み合わせることで、イラストが容易に作れるたが、もちろん用途はそれだけではない。会場で紹介されて感心した例としては、腕時計やシャツの“バーチャル試着”があった。
こうした活用を行なうには、専用に開発されたアプリケーションが必要となる。イラスト作成のようなアプリケーションはプリインストールされているが、HPではソフトウェア開発者向けに「Sprout Software Development Kit」を用意。さらに、ユーザーが作成したアプリケーションを集めたアプリマーケット「Sprout Marketplaceも準備している。
冒頭のタトゥーアーティストは、Sprout by HPに庭の葉っぱや蛇の写真を取り込み、タトゥーのイメージを作成。投影されたパーツを手で動かすことで、イメージが作成できた。
イメージを作成するだけでなく、腕の上に重ね合わせて、実際のイメージを確認できるのが大きなポイントだ。別のイメージへの変更も、手による操作で行える。
テイラーの場合も、“バーチャル試着”で実際に着たイメージを確認しながらシャツの生地をデザイン。さらに、布地にも印刷できるHP製プリンタで生地にイメージを印刷し、カッティングを行ない実際にシャツを仕上げていた。
現行製品の価格は約20万円
Sprout by HPの米国での販売価格は、1899米ドル(20万円強)。少々高額に感じるが、タッチ対応23型フルHDディスプレー、Core i7プロセッサー、8GBメモリー、ディスグリードGPU、1TB HDDを搭載するハイエンドPCでもある。
残念ながら日本での正式販売の時期は未定。オルセン氏によれば、日本のニーズに応えられるアプリケーションの用意など、Sprout by HPを使っていくためのエコシステムの構築が必要であり、それに向かっての準備をしている段階だという。
例えば毎年夏と冬に開催されるコミケが大盛況であるように、日本には漫画やイラストを作る人たちが多くいるが、創作はしたいがパソコンの使い方が難しという人たちも存在する。現状のPCでは難しいと感じてしまう彼らが、Sprout by HPを使って独自の創作物を作る。そんな使われ方を創造してしまう、夢のある製品と言えるだろう。
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