コンタクトセンターは付加価値アプリケーションで成長を――バンコク・ATF 2015レポート
「ファブリックNWと中堅企業市場が成長の鍵」日本アバイア川上社長
2015年06月09日 14時00分更新
アバイアがバンコクで開催した「Avaya Technology Forum 2015(ATF)」。レポート最終回は、今年1月から日本アバイア社長を務める川上佳樹氏に、日本市場における事業戦略や注力ソリューションについて聞いた。
社内/社外の「接点」にテクノロジーのキーポイントがある
――今回のATFイベントでは、「エンゲージメント(engagement)」というコーポレートメッセージが強く打ち出されました。今後、日本市場でもこのメッセージをアピールしていくのでしょうか。
米国人が語る「engagement」、その元々の意味合いやイメージが、日本のお客様にはなかなかピンと来ないかもしれないと、個人的には思っています。日本語に訳すと「結びつき」になりますが、これもまた少し違う印象を与えますし、難しいところですね。
ただし、エンゲージメントという言葉の下でアバイアの製品ポートフォリオを整理したり、今後出てくる製品の位置づけや方向性を示したりすることはできると考えています。
――たしかに、コンタクトセンターが「カスタマーエンゲージメント」、ユニファイドコミュニケーション(UC)から「チームエンゲージメント」と、エンゲージメントというキーワードの下でひとつにつながりました。わかりやすくなったと思います。
そうですね。そして、お客様の将来価値を高めていくためには、その2つをつなぎ合わせる「接点」が必要になると考えています。
チームエンゲージメントを通じて社内やパートナー間で協業し、今までにない新しい価値が生まれます。これをどうやってお客様(カスタマー)に届けるか。これまでとはコミュニケーションのチャネルも手法も変化し、多様化している中で、幅広いオムニチャネルを統合する「接点」をどう作るのか。ここがテクノロジーとしてのキーポイントになる可能性があると考えています。
今日の講演では(EDP:Avaya Engagement Development Platformの)「スナップイン」が紹介されましたが(関連記事)、さまざまなチャネルに対応した機能を提供するスナップイン(モジュール)が用意されていて、お客様はそれを利用してアプリケーションを開発する。これにより、そうした「接点」が迅速に実現できるわけです。
システムのブロックダイアグラムで説明するよりも、「社内(チームエンゲージメント)」と「社外(カスタマーエンゲージメント)」、そしてそれらの「接点」と、プロセスとして示したほうが、位置づけが理解していただきやすいかな、と思います。
こういう発想は、アバイアがコンタクトセンターで一定のシェアを持っているからこそできるのだと思います。ユニファイドコミュニケーションだけのベンダーだと、生まれた付加価値をどうカスタマーに届けるのか、という部分の回答はできないでしょう。
カスタマーは多様なチャネルを使ったコンタクトを求めている
――日本でも「オムニチャネル」という言葉はよく使われるようになっていますが、日本の「カスタマーエンゲージメント」の成熟度はどう見ていますか。
まず、これまでボイス(電話)だけでコンタクトセンターにコンタクトしていたカスタマーが、メールやWeb(チャットなど)、SNSといった多様なチャネルからもコンタクトしてくるようになりました。「コンタクト手段はひとつだけではない」という意識は、カスタマー側ではほぼ定着していると言っていいと思います。
一方で、コンタクトセンター側が、さまざまなチャネルからの(インバウンドの)コンタクトを統合して「1人のカスタマー」として捉えられる能力を持っているか。たとえば、わたしがメールでコンタクトした後で、電話もかけたとします。そのときに「あ、先日メールをいただいた川上さんですね」と理解してくれる仕組みを持つコンタクトセンターは、まだそれほど多くないです。
さらに進化して、カスタマーからのコンタクトに対して「アウトバウンドで」返す能力はどうか。たとえば、カスタマーから電話をもらったが放棄呼(コンタクトセンターにつながらず、取りやめた)になってしまった。折り返し電話をかけると驚かれるでしょうから、SMSなどで「電話がつながらず申し訳ありません。ご都合のよいときにこのURLをクリックしていただければ、こちらから電話します」と連絡する。このように、条件に応じて多様化したメディアをまたぐ形で活用していく。これができているコンタクトセンターとなると、先ほどの例よりさらに少ないでしょう。
日本が遅れていると言うつもりはありませんが、米国やオーストラリアなど、日本よりも成熟している地域はあります。さらに、現在は「どちらかといえばデジタルを使いたい世代」のカスタマーが中心ですが、10年、20年後には「デジタルオンリーの世代」が中心となって、カスタマーの要求もそう変わってくると思います。
(→次ページ、日本市場における事業戦略、注力ソリューションは?)