既存の半導体メモリー技術を用いて膨大な演算を瞬時に解く新プロセッサー
日立、量子コンピューターなみの性能を持つ新型半導体コンピューターを試作
2015年02月24日 16時06分更新
日立製作所は2月23日、1兆の500乗という膨大な数の組み合わせから最適解を瞬時に導き出す新型半導体コンピューターを試作したと発表した。既存の半導体技術を用いており、室温で動作して冷却も不要など、実用可能な技術だという。
多くのパラメーターから最適なパターンを導き出すような計算は「組み合わせ最適化問題」と呼ばれ、古典的な巡回セールスマン問題のように実社会のさまざまなシーンで応用されているが、パラメーターが増えれば組み合わせパターンも指数級数的に増え、その計算のために必要なCPUパワーは膨大なものとなる。
最適化問題を瞬時に解くものとして、現在量子コンピューターの実用化が期待されている。量子コンピューターで最適化問題を計算する「イジング計算モデル」では、量子アニーリングと呼ばれる現象を利用し、複数の電子のスピン向き(それぞれのスピンの向きと相互作用が与えるパラメーターとなる)を量子力学的に重ねあわせ、磁場の強弱で量子ゆらぎをなくしてエネルギーが最小なところで落ち着くようにすると解(実用解)が得られるというしくみ。
日立製作所は、従来からの半導体技術を利用して同様の計算を行う「半導体アニーリング」を行うチップを試作した。量子コンピューターのイジング計算モデル同様に強磁性体スピンを半導体上に配置し、全体的なエネルギーが最低になった点を解として出力する。量子コンピューターでは量子的ゆらぎを用いるのに対し、外部からノイズを与えることで特定の解(局所解)に結果が固定されないようにしているのが特徴。
試作した半導体CMOS回路は室温で動作し、2万480パラメーターの最適化問題を瞬時に解けることを確認したという。これは従来型の演算に比べても電力効率で約1800倍という低電流・高速動作となる。同社では、既存半導体技術を用いてチップを大規模化すれば1600万パラメーターに対応することも可能で、本技術の活用により大規模・複雑化する社会システムへ対応できるとしている。