コミュニケーションで組織は動く
一方で、社内コミュニケーションの強化では、江田社長のこれまでの経験が生きている。
江田社長は、日本法人社長就任前は、アジアパシフィック地域のマーケティングを統括。そこでは、26カ国の人が勤務し、拠点はアジア全域の約20カ所に分かれていたという。つまり、電話とメールでチームをまとめざるを得ない環境にあった。
「そこで学んだのは、しっかりコミュニケーションを取って、相手がどういう考え方を持ち、どういう意見を持っているのかを理解する大切さ。日本法人の社長になってからも、社員や、日本のパートナー、顧客と接するときも、密なコミュニケーションを心がけ、相手がどういう背景でこう考えているのか、なぜこういう考え方が出てくるのか、という点から理解していこうと考えた」
そうした環境を構築するために、遠慮しないでコミュニケーションできるチームへの改革、お互いを信頼することの大切さも徹底したという。そして、「ここでは言えないが」という言葉は厳禁にした。
これを補足するように、宗像副社長は、「コミュニケーションの頻度と質が変わった。リーダーシップチームが明確に早く決断する。誰が、なにを伝えるということが明確になっている。社長の江田のキャラクターもあるが、そのリーダーシップによって、社内の空気感は明らかに変わった」と語る。
これはインテル全体にもいえることで、新たにCODM(チーフ・オブ・ディシジョン・メーカー)をインテル社内に配置。さらに、外部のボードメンバーもプロジェクトの初期段階から発言し、意思決定を行う体制ができているという。
インテルとはコンピューティングそのもの
ところで、ムーアの法則から50年を迎え、創業から47年目を迎えたインテルは、その事業範囲を着実に拡大している。
プラットフォームとしての提案はもとより、マカフィーをはじめとするソフトウェア事業の買収、ネットワーク分野への取り組み強化、IoT分野への積極展開、コンポーネントビジネスの拡大など、半導体メーカーという表現だけでは留まらない領域にまで事業を拡大している。
「講演内容によっては、なぜ私がその領域について、一生懸命語っているのかということを不思議に思い、クエッションマークが浮かんでいるのを感じるときがある」と江田社長は笑う。
たとえば、IoTとインテルとの結びつきについて、まだ認知が浸透していないのも事実。だが、その分野での存在感は着実に増している。
では、いまやインテルはなんの会社だといえるのか。
江田社長は、「技術の会社であり、世界最大の半導体メーカーであることは間違いない」と前置きし、「ムーアの法則そのものをビジネスモデルとして位置づけて事業を拡大する企業であること、そして、インテルアーキチクャーの拡大に取り組む会社であること。この2つが大きな柱になる」と語る。
ムーアの法則が終焉を迎えるという話はこれまでにも何度もあった。だが、その指摘をことごとく跳ね返してきたのがインテルのエンジニアたちだった。「インテルは、ムーアの法則そのものをビジネスモデルだと位置づけている。インテルにとって、これからも法則を実現しつづけることが、使命ともいえる」とする。
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