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ポタ研 2015 冬 第1回

Audio Quest初、白紙から2年かけて設計した「NightHawk」

2015年02月14日 12時32分更新

文● きゅう/ASCII.jp

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 米国オーディオクエスト(Audio Quest)の最新ヘッドフォン「NightHawk」が2月14日開催のポタ研の会場で国内発表された。海外では1月のCESで発表。各種アワードを受賞した。発売は3月末が目途。米国での価格は599ドルであり、為替などを考慮しつつ、同程度の価格帯で市場投入する計画。国内では8万円弱程度になる見込みだ。

 Westonのチーフエンジニアを務めたスカイラー・グレー氏が2年をかけて設計した意欲作。白紙からのスタートで根気よく試行錯誤を繰り返し、開発された製品だという。

 たとえば、技術的変更は35回、ドライバーは50以上試作、イヤーカップは100以上。イヤーカップは当初もっと小さかったが、試作の中で、耳の上部に当たるということで、30%ほど大きなサイズとするなど改善を加えている。

 ラウドスピーカーにインスパイアされた設計でヘッドフォンを作るというコンセプト。良質な製品を入手可能な価格で提供する点も重視している。

 ハウジング素材の“リキッドウッド”はパルプを作る過程でできるリグニンを主成分に採用。それを熱すると射出成型(インジェクションモールド)で自在な形にできるという。一般的なプラスチックや金属とは異なり、木に近い特性で自在に形を作れる点が特徴になる。

 2年間のうち多くを耳の形状に合わせたイヤカップ形状を作る点に費やしたという。内部のハリなどはスピーカーキャビネットに似た補強や吸音材(ポリエステルとウールの混合)を入れている。さらにエラストマーコーティングの塗膜を持ち、微振動も低減する。

 高級スピーカーで用いられる、バイオセルロース振動板を使ったドライバーユニットは、リジットで適度な内部損失を持つ。硬く動作時に歪みが少なく、内部損失が高く、固有音がない点が長所。開発現場には100ほどの著名なヘッドフォンを分解し、研究。その成果から円錐上のコーンの下にあるボイスコイルに補強用のフォーム(筒)を入れ、正確なピストンモーションが得られるよう工夫している。

 磁気回路も新しく、ストリット・ギャップ・モーダーデザインというえぐりを入れた独特な形状。ボイスコイルの上下の移動にあわせた凹みがあり、これにより仮想的な2つのマグネットがあるように、磁気の放射パターンが広がるという。一つの磁石では外れてしまうところまで磁気がおよぶので、幅広いエリアのボイスコイルの動きをコントロールできるようになった。

 高変調歪率の低さも特徴で、開発者自身も驚いたほどの効果を得られたという。

 ドライブユニットを支えるバスケット(スピーカーのフロントバッフルに相当)も設けている。ユニットが動いた際に後ろに流れる気流のコントロールに効果的だという。2.5mmのジャックからドライバーまでの銅線にはPSC+と呼ばれる純度の高いケーブルを用いている。取り付け部分には、スピーカーと同様、サラウンドエッジを設けることで、変形を防ぐといった工夫も見られる。

 目的はすべてはクリーンな再生。これによって疲労感が低減できる。

 外側の網目の部分は、3Dプリンターによるダイヤモンド立体結晶構造。蝶の翅に着想を得た。音を拡散し、共振を抑制。3Dプリンターでなければ作れない複雑な多層構造をフランスのスカルプティオに専用に作らせている。

 デザインの理念で力点を置いたのは、ヘッドフォンとしていかに快適とするか。2本あるヘッドバンドのうち、下側は均等に力がかかるようにしており、さまざまな人の頭頂部の形に合わせた調整を加えている。ディフューザーとリングの部分は柔らかな素材で自由度が高い。

 卵の殻から作ったプロテインレザー(人工皮革)のイヤーパッドを使用している。簡単に取り外しできる構造で、経年劣化した場合でも安心。人間の耳の形状に合わせるため、前が薄く、後ろが厚く、ドライバーが耳に対して水平(頭に対しては斜め)に向かう。前から鳴っているような音になるため、ナチュラルな音場が得られるという。

ちょっとした変換アダプターにも手を抜かないのがケーブルメーカーとしてのこだわり。

 ケーブルはCastle Rockの原理を応用。PSC+と呼ばれる高純度の銅を使った導体。スターカッド構造(4本を束ねる)で、端子部分は分厚い銀コートを施している。変換プラグに関しても、既製品ではなく音響的なこだわり。レッドカッパーをベースメタルにつかい、ニッケル層を持たず直接シルバーコートしている。一般的には真鍮製のベースメタルにニッケルメッキすることが多い。

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