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量子力学的な存在確率分布を分子レベルで確認

アインシュタイン-ボーアの思考実験を分子レベルで実験成功

2014年11月28日 17時03分更新

文● 行正和義

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 a/c:アインシュタインとボーアの二重スリット思考実験の模式図。b/d:二重スリットを2個の酸素原子に置き換えた本実験の模式図

 東北大などの研究チームは11月28日、アインシュタインとボーアが思考実験として提唱した二重スリット実験を分子レベルで実現したと発表した。

 二重スリット実験は、光が粒子なのか波なのかという解釈についての論争されてた際に提唱された思考実験で、粒子であれば2つのスリットのうちどちらかを通る/波であれば干渉して縞ができるというもの。干渉縞によって光が波としての性質を持つことが証明されたが、たったひとつの光子や電子であっても干渉縞ができ、単独の粒子でもその存在する位置は確率的なものとなるという量子力学的な実験として知られている。

 東北大学多元物質科学研究所とフランスのソレイユシンクロトロン放射光施設、スウェーデン王立工科大学らの研究グループは、この二重スリット実験を光子や光ではなく分子レベルで実験を行った。

 X線を当てて励起した酸素分子は電子を放出したのち2つの酸素原子に解離するところに着目、電子の放出とイオン移動を厳密に測定した。電子の放出ののち酸素が解離するのであれば、2個の酸素原子が受ける反跳運動量は同じであり、どちらの原子が電子を放出したかは決定できない。これに対し、酸素原子への解離ののちに電子が放出されたのであれば、一方の酸素原子が電子の反跳運動量を受け取るため、どちらの原子が電子を放出したかを決定できる。

二重スリット思考実験を分子レベルで実現した実験結果(左)と計算結果(右)。電子を放出した原子が特定できない場合は干渉縞が生じ(上)、特定できる場合は干渉縞は生じない(下)

 実験では、前者(どちらの原子が電子を放出したのかが決定できない場合)では、運動量の測定結果に干渉縞が確認された。一方、後者(電子を放出した原子を決定できる場合)は、干渉縞が消えることが確認された。

 光や電子を用いた二重スリット実験はすでに多数の実験者によって行われているが、分子レベルの実験はまだ少なく、量子力学の不思議な現象が電子1つや光子1といったサイズよりもはるかに大きなスケールでも確認できるというのは興味深い。

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