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やはり量子力学といえば「猫」

ウィーン大学、量子もつれ効果で猫を撮影

2014年08月29日 14時16分更新

文● 行正和義

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量子もつれ効果を利用して撮影された猫(の輪郭にエッチングしたシリコンパネル)の映像:(Copyright: Patricia Enigl, IQOQI)

 ウィーン大学の研究グループは8月27日、量子もつれ効果を利用して被写体に一度も当たっていない光子を使い、猫の像を映し出すことに成功した。

 実験を行ったのはウィーン大学量子科学研究センターのツァイリンガー(Zeilinger)氏が指導するグループ。量子もつれ効果(エンタングルメント)によって作られた粒子対はたとえどんなに離れていても相互に影響を及ぼす相関状態となり、量子暗号通信などの基本となっている。

 実験は、レーザー光を分割するビームスプリッター(ハーフミラー)と波長を変換する非線形結晶を組み合わせたもので、被写体からの光(実際にはビームの間に入れた切り抜きのシルエット)が撮像素子には届いていないにもかかわらず、量子もつれ効果による作用で猫のシルエットが映像化された。

使用した実験装置。右下から放射されたレーザー光(緑の線)はハーフミラーによって分けられ、その一部は非線形結晶で周波数を変えられて(赤い線)猫の切り抜きを通ったのち左方向に出てゆく(ハーフミラーで光路は交差する)。残る緑の線と黄色い光は左上のCCDで映像化される。赤線の光はCCDには届いておらず、また干渉しているわけでもないが量子力学的な排他原理により黄線の光子は位相が変化してしまうことになるようだ

 まだ遠隔映像(被写体からの反射した光子を使う)を撮影する「量子もつれデジカメ」と呼ぶにはまだ早い段階ではあるが、被写体から出る光子に依存しない情報によって映像を得ることはまったく新しいイメージング手段であり、さまざまな可能性を開くものとしている。

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