AKB48のヒットソングに合わせて、自分の「推しメン」がスマートフォンの画面でダンスする——アイドルグループ「AKB48」の初のリズムアクションゲームが、「AKB48 ついに公式音ゲーでました。」だ。2014年5月の公開以来、累計ダウンロード数は160万を超えるヒット作となったが、それを支えたのは、過去のソーシャルゲームでの経験を踏まえてあらためて取り組んだ綿密な初期設計と、公開直後のトラフィック増に臨機応変に対応したIDCフロンティアのインフラだったという。
初の「ネイティブアプリ」としてリリースした気合いの1本
「AKB48 ついに公式音ゲーでました。」は、AKB48のメンバーの中から最大6人を選び、「フライングゲット」や「恋するフォーチュンクッキー」をはじめとするさまざまなヒット曲をプレイする「音ゲー」だ。本人の特徴を反映した3Dキャラクターがダンスし、本格的なライブが楽しめる。「推しメン」のポイントを競ったり、特別なステージで難易度の高いプレイにトライするといったイベントも定期的に行なわれている。
開発に当たったのは、ストラテジーアンドパートナーズだ。これまで、「魔法少女まどか☆マギカ オンライン」や「進撃の巨人 -反撃の翼-」といったソーシャルゲームをリリースしてきた同社だが、「AKB48 ついに公式音ゲーでました。」は、これまでのWebアプリではなく、「Unity」を用いて開発し、同社初のネイティブアプリとして配信した。iPhone4Sから最新機種まで、幅広いデバイスをサポートしたかったことも、Unityを採用した理由の1つだったという。
ストラテジーアンドパートナーズ 執行役員 曽羽孝則氏は「『AKB48 ついに公式音ゲーでました。』では3Dデータを使って振り付けを再現しているが、iPhone4S程度のスペックで、同時に何人まで動かせるかがチャレンジだった。本人の特徴をなぞったキャラクターというのは、ユーザーにとってもっとも愛着の湧くところ。そこのクオリティを落とさずに、どこまで多くのキャラクターを動かせるかに力を注いだ。当初16人まで出そうという案も出たがさすがにそれは無理で、最終的には6人に落ち着いた。3Dデータによって、これまでの弊社のゲームや音ゲーと差別化できていると思う」と語る。
同時アクセス数は予想できていたものの
データのダウンロードで負荷集中
一方、サーバー側の基本的な構成は、これまでのゲームとそう大きくは変えていないという。Apache Web Serverとロードバランサー、Redisを用いたキャッシュサーバーに、MySQLによるデータベースサーバーというごく普遍的な構成で、IDCフロンティアのクラウド基盤上に構築した。ただしデータベースについては、I/Oパフォーマンスを考慮し、仮想マシンではなく専用サーバーを採用したという。
インフラ側で課題となったのは、アプリ公開後のデータダウンロードのための負荷集中だった。
AppStoreでは規約上、アプリのサイズが100MBを超えると3GやLTE回線経由でのインストールが行なえない。とはいえ、無線LAN経由でのインストールとなると、顧客に一手間かけてしまうことになる。そこでアプリ本体のサイズは100MBに抑え、楽曲など残りのコンテンツデータはインストール後に同社サーバーから配信する仕組みとした。公開直後、ボトルネックとなったのはこの部分だった。
「音ゲーということもあり、これまでに比べてもコンテンツがリッチになっている。同時アクセス数については数百万規模を想定して事前に準備していたが、公開2日目でAppStoreの無料ランキング1位にランクインしたこともあって、アプリインストール後に必要なデータをダウンロードするためのアクセスが集中し、回線の負荷が上がってしまった。その部分はIDCフロンティアと連携して、短期間で増強を行った」と、ストラテジーアンドパートナーズ 開発システムチーム インフラユニット 武川智法氏は振り返る。
公開当時、最初にダウンロードする必要のあったデータは460MB程度。事前に4~6Gbpsの回線を用意していたが、公開後3日間ほどはその回線が埋まる勢いだった。予備回線として用意していた1~2Gbpsの帯域も、増設の5分後には使い果たすほど。結局、IDCフロンティアが急遽手配した回線で帯域をほぼ倍に増やしてカバーしたという。
(次ページ、過去の経験を踏まえてレビューとテストを繰り返す)
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