筆者にとって、携帯する小さな“テープレコーダー”が極めて印象に残ったのは、今から20年以上前の米国の人気テレビ番組「ツインピークス」だった。
物語の冒頭で、FBIのクーパー特別捜査官が「ダイアン、この事件はどこからどう見ても、連続殺人の可能性が濃厚だ。問題は、これが最初なのか、それとも最後なのか、ということだ……」と小型のテープレコーダーに向かって録音しているシーンだった。
汎用の録音機器であったテープレコーダーから、音声による“備忘録”作成のためのボイスレコーダー、そして記録メディアがアナログ系のカセット系テープからICメモリーチップに代わったICレコーダー……名前が変わるたびに、サイズやテクノロジーの進化があっても、基本的に人が自分の脳内に入りきれないかもしれない重要事項を忘れずに、思い立ったその時に記録して後々役立てるための道具だ。
筆者はかれこれ10年以上昔に衝動買いした極めて“変態デザイン”な、オリンパスのICレコーダーを今だに愛用している。少なく見積もっても、これまでに数台以上のボイスレコーダーを購入した筆者だが、今も手元に残っているのはこのICレコーダーだけだ。
間違いなく筆者のパーマネントコレクションである。操作性はもとより、何と言っても手に持った時のサイズと全体の形状からくる快適な“ニギニギ感”が手放しがたいアイテムだ。
そんな筆者の第二番目のパーマネントコレクションにランキング入りそうなICレコーダー「備忘録」がパナソニックから発売された。
カセットテープの形状をしたICレコーダー「備忘録」
備忘録の外観は、なぜか懐かしいカセットテープの形状をしている。実際のサイズは、カセットテープより二回りは大きく分厚い。しかし本体重量は極めて軽く、単4乾電池2個を含んでも実測で107g、本体だけならたったの85gだ。
昨今はわざわざICレコーダーのたぐいを買わなくても、スマホ用の定番アプリとして多種多様なものが存在するが、やはり電話として作られたものと、音声の録音/再生専用ハードウェアとして考え抜いて開発されたICレコーダーは別物だ。
録音/再生時のアクションのスピーディさや操作の安定性、容易性、確実性、携帯性など、単能機のよさには捨てがたいものがある。
筆者が10年以上使っているオリンパスのICレコーダーはその点素晴らしい形状デザインをしている。一方、半分以上は関西系のジョークで、懐かしいカセットテープの形状をリバイバルしたパナソニックのICレコーダーは明らかに不利だ。
そもそもカセットテープは、工業デザイン的に人が手に持って使う目的として発想されていないので、当然といえば当然。
机の上に置いてセミナーや会議の内容を記録するのが目的なら別だが、常にポケットの内側に忍ばせて備忘録として活用するならはじめから不適当なデザインだ。
しかし、実際には持ち方をいろいろ試行錯誤しているうちに、意外と携帯型ICレコーダーとして使えるホールディングスタイルがわかってくる。そんな自分オリジナルのホールディングスタイルを思いつくのも楽しいガジェットだ。
(次ページに続く、「備忘録は音楽プレーヤーとしてもうってつけ!?」)
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