山本会長が「だが悲観しない」という理由
だが、その一方で、「これからの日本のIT・エレクトロニクス産業については、私は悲観していない」とも語る。
それにはいくつかの理由がある。
ひとつは、安い労働力を追う経済モデルが終焉。新興国が有利だった労働集約型の生産体制から、ロボットなどのテクノロジーを活用した生産体制へと移行。先進国の競争力が回復している点だ。米国企業が、米国国内での生産へと回帰しはじめたのがその一例だとする。
2つめにはASEANをはじめとするアジア市場の台頭。ここでは、中間所得層が大幅に増加し、2020年にはそれらの層が約3億人にまで膨れ上がると見られている。そして、日本にとっては地理的に近い優位性や、アジア市場をよく知る優位性などが発揮できると分析しているのがその理由だ。
また、日本の設備投資が改善基調にあること、世界最高性能を持つスーパーコンピュータを国内に有していること、ネットワークインフラでの先進国であることなども、日本にとっては追い風だとする。
「生活、健康、教育、住宅、クルマ、街といったような領域で、IT・エレクトロニクスがイノベーションを支える。いわば、ビジネスチャンスが無限に広がる時代が訪れている」とする。
また、日本には、個人、産業、社会といった点でも強い潜在力があると指摘。「個人では、世界第2位の教育水準にあり、高いインターネット普及率がある。産業では特許出願数が世界2位、農業における研究や技術が蓄積され、農業生産でも先進国では世界トッフプクラスであること、社会では高い医療水準を持ち、省エネルギー先進国であることがあげられる。こうした潜在力に加えて、テクノロジーを活用することで、イノベーションの創出を支援できる。世界をリードし、未来に貢献できる競争力を目指したい」とする。
低迷を続けてきたIT・エレクトロニクス産業は、ようやく長いトンネルから抜け出す出口にまでたどり着いたといえるのか。体質改善に費やしたこの数年の成果が、国際競争の舞台でどう発揮されるのかが注目される。
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