まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第48回
セルフパブリッシングの未来(7)
スマホ時代の無料コミックのデファクトとなるか?――comicoの戦略を聞く
2014年10月05日 09時00分更新
マンガは「地に足のついた」ビジネス
―― 注力しているポイントは異なりますが、ソーシャルゲーム大手のDeNAやハンゲームを手がけてきたNHN PlyaArtがこぞってスマホ向けマンガに力を入れているというのは興味深いですね。
稲積 「これまでお話ししてきたような、ゲーム化・映像化の源流がマンガであるということももちろんあるのですが、そもそものマンガというコンテンツは読者(=ユーザー)の母数が非常に多いという点が、事業としては魅力的です。comicoチームのメンバーのマンガに対する思い入れもめちゃくちゃ強いですよ」
―― ゲームですと、いわゆる「ガチャ」を回してもらって、デジタルアイテムによる非常に高い収益があったわけですが、マンガの場合はどうでしょうか?
稲積 「ゲームはタイトルごとの浮き沈みが大きいのが特徴です。リスクもありますが、アップサイド(上振れ幅)も大きいので、我々も引き続き取り組んでいきます。
ただ冒頭でお話ししたように、ユーザーに“楽しさ”を提供するのは何もゲームだけでなくてもいいわけです。マンガであれば、それに合った規模感の投資と、それに伴うリターンがあるのではないかと考えています。
ゲームのように早い段階での回収を急がなくても良いので、マンガであればマンガに適したビジネスモデルが構築できれば良いなと思っています」
―― ゲームがリッチ化・大型化するなか、スマホマンガはある意味じっくりと「地に足のついた」事業に育てていきたい、ということですね。
稲積 「その通りです。ネイティブアプリ化によって、タイトルごとに勝負しなければならなくなったゲームと違って、comicoは様々なタイトルがラインナップされたプラットフォームです。その点は大きな違いと考えています」
―― わかりました。本日は多岐にわたりありがとうございました。
夜宵草さんにメールインタビュー その6
Q:最後に『ReLIFE』読者へのメッセージをお願いします。
夜宵草 「いつも『ReLlFE』を読んでくださってありがとうございます。描き始めてから1年足らずですが、皆さんのおかげで、ここまで来ることが出来ました。これからも皆さんの応援に応えられるよう頑張ってよい作品を作っていきます! よろしくお願いいたします」
◆
マンガボックス、E★エブリスタ、そして今回のcomicoと、電子小説・コミックのプラットフォーマーに話を聞くと、出版を巡るバリューチェーンの上流・源泉に彼らが位置しつつあることが分かる。
新しい才能を発掘し、育て、その権利をマネジメントできるのは、積極的にリスクを取る・取れるプレイヤーなのだ。逆に言えば出版社、そしてそこで活動する編集者の役割、存在意義があらためて問われている。次回は、この変化を整理し、セルフパブリッシング特集を一旦締めくくりたいと思う。
著者紹介:まつもとあつし
ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程に在籍。デジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆などを行なっている。DCM修士。
主な著書に、コグレマサト氏との共著『LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか?』『LINEビジネス成功術-LINE@で売上150%アップ!』(マイナビ)、『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)など。
Twitterアカウントは@a_matsumoto
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