英語で得た知識を日本語に翻訳して伝える
ゴールドコースとやハワイといったライフセービングの先進国では、世界的なアスリートも参加。朽木氏自身もオリンピック選手などと一緒に活動。公務員として消防や警察と同列の専門職として認められている。
一方、国内のライフセービングクラブは基本的にボランティアを主体としており、それは鎌倉ライフガードも例外ではない。夏休みの限られた期間だけ、市や海浜組合から委託という形で仕事がもらえる。鎌倉ライフガードでは、夏の2ヵ月以外にも冬の間にプールで基礎体力を高めたり、実際の事故を想定したシミュレーション、人工呼吸や心肺蘇生といった技術の向上などに取り組んでいるが、専門職としてはまだ受容されているとはいいにくい面もある。
「オーストラリアでは警察、消防に並ぶ存在として、ライフガードが認知されており、公務員として働いている」「日本のライフセービングもいい将来に向かって進んでいる途上だが、オーストラリアはさらに先にいる」と朽木氏は話す。
鎌倉ライフガード代表の多胡誠氏によると、現在80人を超える会員を持つものの、学生や社会人が別の仕事を持ちながらライフセーバーとして働くのが中心で、年ごとにメンバーが入れ替わることの多いのだという。
「海で人がおぼれるのは、砂浜~沖合い200~300m程度まで。ここを守るのがライフセーバー」だと朽木氏は話すが、そのためには波との協和、そこに近づくためのトレーニング、冷静な判断力を浜の上で培う必要があるという。同時に組織作りや規律だけでなく、サーフスキル、ウォータースキル、救護活動の知識も高水準。この具体的な経験を言葉にし、「英語で得た知識を日本語で伝えるのが自分の責任だと思っている」とする。
同時に浜辺に関する考え方の違いもある。
ゴールドコーストは「いい意味で人工的に作られた海水浴場」だと朽木氏は表現する。「地方自治体のサポートが行き届いており、浜辺には大型の機械が入って砂を掻き分けるようにして清掃をする。白い砂浜と目が行き届いた歩道が整備され、タバコやお酒などもNG。海岸のすぐそばにはビルが立ち並び、きれいなトイレやバーベキューも無料で利用できる」といった話を聞くと、自然を人の手で作り変え、計画的に観光の場として開発されている印象を受ける。「日本、そしてアジアは海とともに生きるという意識が、西欧よりも強いのかもしれない」と朽木氏は言う。
しかし、鎌倉そして湘南の海岸はゴールドコーストに似ている面もあるという。鎌倉で育ち、父親から2代続けて由比ヶ浜でライフガードを務めた自負もある。
なぜ鎌倉かという問いに朽木氏は、「日本にはいろいろなビーチがあるが、都心からそれほど時間をかけずに電車に乗って来れて、駅を降りればすぐ海岸が広がる」。こうした利便性の高さに加え、湘南ライフスタイルとも言うべき、土地のブランド化といったことを実践していけば、「ここを中心にした発展ができるのではないか」とも考えているのだと答えた。
笑顔の人でも一瞬後には、どうなるかわからない緊迫感があるのが海。冒頭で紹介した言葉は取材の中でも非常に印象的なフレーズだった。ITはそのための有効的なツールになりえるのだろうか? YOGA TABLET 8の活用事例は、その回答のほんの始まりに過ぎない。