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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第262回

Pentium 20年の系譜 今に受け継がれるP5コアの誕生からMMXまで

2014年07月21日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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【Pentiumがパッとしなかった理由 その1】
整数演算性能が後発のi486DX4を下回る

 整数演算性能では、理論上は2命令/サイクルで処理できるため、i486DX4/100MHzを上回る性能を出せるはずだったが、実際には当初の性能は1.2~1.3命令/サイクルに留まっており、絶対性能では後から登場したi486DX4/100MHzを下回ることがあった。

「i486DX4」。画像はWikimedia Commonsより(http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ic-photo-Intel--A80486DX4100-(486DX4-CPU).png)

【Pentiumがパッとしなかった理由 その2】
PCIが役立たず

 PCIを積極的に導入すべく、Intel 430LX(Mercury)チップセットとペアでリリースしたが、このPCIがまったく性能が出なかった。この世代はまだPCIのスペックそのものが固まっていない時期だったこともあり、まだ互換性が取れていなかった。

 結果として、一番安定する(ただし遅い)転送方式が使われていたので、長く使われて性能チューニングの進んだVL-Bus接続のデバイスに性能面で遠く及ばなかった。

【Pentiumがパッとしなかった理由 その3】
価格が高かった

 そして、CPUそのものの価格が高かった。当初の価格は60MHz品が878ドル、66MHz品が964ドルである。ちなみに当時の為替レートは1ドルが116円前後であり、要するにほぼ10万円になる。チップセットもまた高く、結果としてCPU+マザーボードの価格は15~16万円近くなった。

 これに対し、1994年に投入されたIntel DX4は100MHz品が580ドル、やや動作周波数の低い75MHz品は475ドルの価格がついていた。チップセットもSiSやOPTi/AMIなどの互換メーカーのものなら安価だったため、CPU+マザーボードの価格を10万以下に抑えることはそう難しくなかった。

 インテルは当初Pentiumを「次世代のハイエンドプロセッサー」と位置づけていたこともあって、わりと強気な製品構成を崩さなかった。

 ところが1993年は、AMDやCyrixといったx86互換メーカーの追い上げだけではなく、DECのAlphaやIBM/MotorolaのPowerPC、TIのSuperSPARC+、MIPSのR4200といったワークステーション分野で、Pentiumと競合するであろうハイエンドプロセッサーがかなり安価にリリースされた。

 そこで、さすがのインテルも少しテコ入れが必要と感じたのだろう。3月にはプロセスを0.6μmのBiCMOSに微細化したP54CコアのPentiumが投入される。これに合わせてチップセットも更新され、430NX(Neptune)を経て430FX(Triton)がリリースされた。

価格の下落で爆発的にヒット
バグ問題が発覚するもすぐに収束

 P54コアPentium+430FXチップセットというのは、この時期のPCの鉄板構成となる。CPUは、当初こそ849ドル(90MHz)/995ドル(100MHz)と高値だったものの、年末までには半額あたりまで急速に価格が落ちたことで、「今から買うならDX4よりもPentium」という流れが明確にできた。

 そのうえチップセット側もようやくPCIのバスマスターがしっかり動くようになったことで、VL-Busよりもトータル性能が高くなった。とくにビデオカードで次第にPCI対応が増え、翌1995年にはPCI専用である3dfxの「Voodoo」などが出てくるようになったことで、急速に普及が進んだ。

 自作ユーザーの間では、90MHz版(60MHz×1.5倍)のPentiumを購入して、100MHz(66MHz×1.5倍)で駆動させるのは容易で、運がいいと75MHz版(50MHz×1.5倍)で100MHz駆動可能な個体が入手できたので、比較的リーズナブルに遊べた時代である。

 その後、非常に小さな値で割り算を行なうと結果がおかしくなるという、PentiumのFDIVバグ問題が出て、当時としては大騒ぎになったものの、結果それほど大きな影響を及ぼすことなく収束した。

 当時のことを思い出すと、「FPUを使うことはほとんどないから、バグ有りでいいのでその分安く売ってほしい」と思ったものだが、インテルがきっちり回収してしまい、安価に出回ったものはなかったと記憶している。

バグ付きPentiumが入ったアクセサリーの拡大写真

 ちなみに、あまり知られてはいないが、このP54Cの派生型にP54CTというCPUがある。これはデュアルCPU対応製品で、P54CとP54CTを1個づつ組み合わせることで、2CPUのSMP構成が実現できるというものだ。要するに後のXeon系列となるサーバー/ワークステーション向けの最初の製品である。

 もちろん、マザーボード側も2CPUに対応したものが必要であったが、AMIの「Titan-II」やTyanの「Tomcat I」などの製品がリリースされている。もっとも、ハードウェアはともかくOSの方は、この時点で対応していたのはWindows NT 3.1と一部のUNIX系OSだけということもあり、あまり広くは使われなかった。

→次のページヘ続く (微細化した第2世代はMMXでさらに進化

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