企業が自社クラウドを築き稼働させる前には、試用期間が必要だ。
今日の企業はどこもアマゾンのようになりたいと願っている。彼らは低コストで融通性もあるクラウド・コンピューティングの魅力に惹かれ、OpenStackやその他のプライベート・クラウド・ソリューションを導入している。彼らはまるで翼の生えたユニコーンを育てているように思っている。
実際はロバを育てているようなものだ。
このメッセージは元Gartnerのアナリストで現在Red Hatのゼネラルマネージャーであるアレッサンドロ・ペリッリが最新のRed Hat Summitで述べたことだ。ペリッリは悲観し塞ぎ込むことよりも、企業が描くクラウド・コンピューティングの理想像を実現するビジネス手法が存在することを示唆した。
企業クラウドへの期待は低めに
企業は、パブリッククラウド、例えばAmazon Web Servicesのような「サービスとしてのインフラストラクチャ」を大いに参考にして、自社プライベート・クラウドをとても大きく思い描く。 そして企業はOpenStackやその他のプライベート・クラウド技術を試してみる際に、以下のことを期待している。
・シンプルであること。
・低コストであること。
・標準的で全自動であること。
・アプリケーションレベルで「融通がきく」こと。すなわち需要の増減によって可変するジョブに、クラウドが自動的にコンピューティング・リソースを増減することで対応可能なこと。
・リソース消費量ベースであること。
・インフラレベルでスケーラビリティが無限大にある。つまり企業が望む規模でクラウドを構築できること。
・Amazon Web Servicesのように、IT(およびITポリシー)から強い干渉を受けず、管理が最小限で済む。
しかしセットアップの時点で実際に気づくのは以下のことだ。
・紛れもなく複雑であること。
・高コストであること。
・一部が標準的で自動化されるのはほんのわずかであること。
・望んだような融通性がないこと。
・容量に制限があること。
・IT依存は危険をはらむこと。アクセスと財務の管理、キーの管理と暗号化、その他ツール全てを企業がクラウドで管理しようとするため。
下の図はペリッリが示唆した、今日における企業のクラウド・アプリケーションの現実だ。
企業がこの不快な現実に気付くと、パブリック・クラウドがさらに魅力的に見え始めるというのは、驚くことではない。全てにおいて柔軟性を発揮する企業内データセンター(クラウド環境)を構築することは非常に難しいことが明らかになった。
夢は大きく、スタートは小規模に
ペリッリが提案するのは、「企業が最終的に完全自動化した大規模生産クラウドの構築を考えていても、まずは小規模なものから始める」ということだ。企業がデータセンターのアプリケーションをクラウド環境へ移行する際、その行程は複雑なものであるからだ。1個のアプリのコンポーネントが大きいほど、よりしっかりとした準備が必要になる。企業が自動化する部分を増やそうとするほど、その作業の難度は高くなるだろう。
彼は次のように論じている。
もちろん、企業はクラウドを6ヶ月で構築できます。しかしそれは始まりに過ぎません。彼らは機能を追加し、ソリューション考案し、熟練度を上げ制御する要素を増やし、さらにキャパシティ管理にかける労力も大きくする必要があります。誰もこれらを一晩で構築することはできません。
レガシーシステムを考慮する場合、クラウド環境の構築難易度はかなり上がる。例えば、ある企業にとって不可欠の古いメインフレーム・アプリケーションをクラウドベースのシステムに統合するのは必ずしも容易ではない。
そのような場合、企業が10個アプリケーションをクラウドへ移行するのに1年はかかる。企業が数千個のアプリケーションを移行するとなれば、作業は非常に困難なものになるだろう。
ペリッリは怖気づくことなくクラウドを導入する方法を提案している。
1.期待をリセットする。
2.自社組織の技術的熟練度に見合うクラウド・ソリューションを選択する。会社が管理モジュールを1、2個しか使用しないのに、12個もの管理モジュールがバンドルされたベンダー製品を買わない。
3.堅実に開発を進め、最初にクラウドをテストする。そして「完全自動化」のクラウド製品を売りに来る者を信じてはいけない。
4.特に多階層クラウド・アーキテクチャの導入を検討する場合、スケールアウト・アプリケーションに対する実行可能なサポートを導入する。
信頼を持って構築する
最後に、より正確に言えば、プライベート・クラウドは技術的に未熟であるからこそ、クラウドの最も重要な要素とは技術と何の関係のないものだとペリッリは述べる。
(私達は)そのことを認識しなければなりません。なぜなら、完璧なソリューションとはマーケティングのうたい文句に過ぎず、実際には存在しないのです。より重要なのはベンダーとの良好な関係性、信用、信頼なのです。
言いかえれば、実用的な企業クラウドを構築するのは冒険のようなものだ。ゆえに旅の同行者を賢く選ぶことが重要だ。
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Matt Asay
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※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら