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Googleアナリティクスによるアプリ分析の基本と改善事例 (2/3)

2014年07月04日 11時00分更新

文●池村 修/エキサイト

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Googleアナリティクスによるアプリの改善事例

 Googleアナリティクスを使いこなすと、アプリが抱えるさまざまな課題の原因を分析し、改善策を検討できます。エキサイトのアプリでの取り組みをもとに、Googleアナリティクスを使った集客施策の検証、改善事例を紹介します。

Push通知を調整してアクティブユーザー数を増やす

 「エキサイトニュース」アプリは、インストール数は伸びているものの、実際にアプリを起動するアクティブユーザー(DAU)の伸び悩みが課題でした。下のグラフはある1週間の時間帯別ユーザー数の推移です。平日の朝7時と昼12時に大きな「山」があることが確認できます(破線部分)。

時間帯別ユーザー数推移

 このアプリでは、毎朝7時に「朝の通勤時間にニュースを読んでくださいね」という意味を込めたバッジを表示しているので、朝7時のユーザー数が急激に多くなっています。

iPhoneアプリ バッジの例

 一方、昼12時にはバッジは表示していませんが、お昼休みに「ニュースを読む」習慣を持つユーザーが多いためか、大きな山ができています。同様に、帰宅時間である夕方に「ニュースを読む」行動を取るユーザーも一定数いるようで、2つの大きな山のあとにも小さな山があります(矢印部分)。

 そこで、「昼12時と夕方にもバッジやPush通知機能を付ければ、アプリを起動する機会を増やせるのではないか?」と仮説を立てて実行します。以下は平日のみの結果です。

改善後の時間帯別ユーザー数推移

 大きな山が3つになりました。昼12時のユーザー数は朝7時よりも多くなり、夕方に利用するユーザーも増えています。山が3つになったことで、DAUが大幅に増え、それに伴いMAUを伸ばすことに成功しました。

 ただし、バッジやPush通知機能を乱用すると、ユーザーにとってうっとうしい存在になり、かえってDAUを減らしかねません。通知する時間帯や数は、ユーザーの反応を見ながら調整する必要があります。

課題 DAU/MAUの伸び悩み
分析 時間別にユーザーのアクセス数を集計
現状 アイコンにバッヂをつけている朝7時とアイコンにバッジを付けていなくても昼12時にアクセスが多い。夕方も若干アクセスが伸びる
仮説 アクセスの伸びる昼12時と夕方にもバッジをつければ、アクセス増加が見込める
結果 DAU/MAUの増加に成功

ユーザーの利用環境を把握してサービス提供デバイスを決定する

 既存のアプリを最新OSに対応させる場合、OSがリリースされてから開発していては間に合いません。自社のアプリの既存ユーザーが最新OSに移行するタイミングがわかっていれば、事前に開発体制を整えて計画的に対応できます。

 そこで、最新OSがリリースされた直後のユーザーのOSの移行状況を見て、今後の対応方針を検討することにします。ユーザーの利用環境はGoogle Play Developer ConsoleやiTunes Connectでも把握できますが、Googleアナリティクスでは実際にアプリを利用しているユーザーのデバイスやOSのバージョンを確認できるので、より正確な判断ができます。

 下図は、エキサイトニュースアプリにおける、iOS 7のリリース日(2013年9月19日)の前後1週間のiOSのバージョンシェアです。

Google アナリティクス iOSのバージョンシェア

 iOS7のリリース後1週間で、ユーザーの50%近くがiOS 7に移行しており(右図)、エキサイトニュースのユーザーは最新OSへの関心度が非常に高いことがわかりました。

 このことから、エキサイトニュースでは、最新OSへの対応と最適化を優先すべき課題として設定し、最新OSのリリースにすばやく対応することにしました。新OSのリリース当日に合わせてアプリをアップデートできるように、開発体制を整えています。

課題 新OSへの対応すべきタイミングが不明
分析 新OSリリース前後のユーザーが利用しているOSバージョンを集計
現状 1週間で半数のユーザーが新OSにバージョンアップしている
結果 新OSへの対応と最適化を実施する方針決定

 また、上の画面の「上位の端末モデル」を見ると、既存ユーザーの15%がiPadで利用していることがわかります。そこで、iPhone用のUIのままiPadに配信するのではなく、iPad向けに最適化したUI/UXを提供する方針も定めました。

課題 iPad向けUIの必要性が不明
分析 デバイス別のユーザー利用率を集計
現状 iPad(タブレット)を利用しているユーザーが15%
結果 iPad用のUI/UXを提供する方針決定

関心の高いキーワードをみつけてインストール数を伸ばす(Google Play配信アプリのみ)

  Androidアプリ「寝たまんまヨガ」は、新規インストール数が伸び悩んでいました。そこで、Google Playストア内でアプリダウンロードに達した際の検索キーワードを取得し、施策を検討することにしました。

 以下は、Androidアプリ「寝たまんまヨガ」の検索キーワードです。

Google アナリティクス Android検索キーワードキャプチャ

 検索キーワードの上位はアプリ名が占めており、「ヨガ 痩せる」「ヨガ 体験」「ヨガ ダイエット」といった一般的なキーワードがほとんどありません。

 そこで、「友人からの口コミや、雑誌、TVで紹介されたときにアプリ名を検索したりしているのではないか?」という仮説を立て、FacebookやTwitterのソーシャルメディアや、友人同士で情報を共有しやすいLINEを利用して、アプリを拡散させる施策を計画します。具体的には、「Yahoo! リアルタイム検索」などでユーザーがFacebookやTwitterでシェアしている文言を検索し、実際にユーザーが発している文言をシェア機能にプリセットしておく、といった方法があります。

課題 新規インストール数の伸び悩み
分析 Google Play内の検索キーワードを集計
現状 アプリ名での検索ほとんど
仮説 アプリを知った上で探すユーザーが多い。拡散する仕組みを導入することで新規ユーザー獲得が見込める
結果 実際にSNSサービスが利用されるか分析予定

 アプリ名以外のキーワードでの検索が多ければ、そのキーワードをGoogle Playストアのアプリ紹介文やアプリのタイトルに盛り込むことで、検索ヒット率の向上が見込めます。キーワードが名詞であれば、それに付随しそうな動詞を入れてみるのもよいでしょう。例えば、「ヨガ」+「寝る」「リラックスできる」「解消する」などいくつか組合せると、シンプルでわかりやすいアプリ名が作れます。

課題 新規インストール数の伸び悩み
分析 Google Play内の検索キーワードを集計
現状 名詞+動詞の検索パターンが多い
実施 ASOとしてキーワードをアプリ名、ストア説明文に追加し、インストールを促進

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