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ゆっくりと収益化を図るPinterestの戦略とは

2014年06月03日 16時10分更新

文● Lauren Orsini via ReadWrite

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Pinterestは、ユーザーの信頼を裏切るとどうなるか身を持って知っている。そのため同サービスのマネタイズには慎重で確実な方法がとられている。

ゆっくりと収益化を図るPinterestの戦略とは

Pinterestはこれまでサービスの収益化を急いでいる様子はなかった。過去5年間で7億5千万ドル近くの資金を投資家から調達してきたことを思えば、特に急ぐ必要もなかったのだろう。

しかし最近になって同社はようやく、利益の追求を本格的に開始したようだ。昨年の冬にはSan Francisco Chronicleの元社長、ジョアンヌ・ブラッドフォードを採用し、コンテンツや商業的パートナーシップの責任者に抜擢した。

ジョアンヌ・ブラッドフォード。画像提供:Pinterest。

ジョアンヌ・ブラッドフォード。画像提供:Pinterest。

ブラッドフォードがPinterestに入社して半年が経った今、同社の収益化計画が少しずつ見えてきた。今月彼女の率いるチームは、「プロモーション・ピン」と呼ばれる広告ピン(Pinterestの基本要素となる画像ブックマーク「ピン」の広告版)の最新版を披露したばかりだ。

「Pinterestの使命は、新しい発見の手助けとなることです」とブラッドフォードは語った。「プロモーション・ピンは、人々にとっては新しい発見を行うヒントに、またブランドにとっては人々に見つけてもらう良いきっかけとなるでしょう」。

2回目のチャレンジ

Pinterestのプロモーション・ピン戦略は実に慎重に進められている。ブラッドフォードが採用される直前の9月に初代のプロモーション・ピンが登場したが、それはユーザが投稿する通常のピンと全く区別がつかないものだった。例えば、プロモーション・ピンにキャンプ用ランタンの画像が掲載されたとしよう。そのピンは「ハイキング」で検索した結果にのみ登場し、ユーザがシェアした画像と見分けるのは不可能に近い。

この極めて慎重なアプローチは、2012年2月に同社が実施した広告手法が炎上した結果誕生したものだ。当時、Pinterestはまだ規模が小さかったこともあり、今のような広報部門を持っていなかった。よって、同社がひっそりと自動アフィリエイト・リンク(eコマースサイトにリンクが貼られたピンにトラッキング・コードを付加するというもので、サイトの収益化に良く使われる手法)の実験を開始した際、ユーザに対する告知は行われなかったのだ。

その後、Pinterestユーザたちがこの実験に気付き始めた。中でもテクノロジー・ブロガーのジョッシュ・デービスは、同社が秘密裡にアフィリエイト・リンクを使ってユーザの投稿から利益を得ていたことを発見し、強く批判した。事態は予想以上に悪化してちょっとしたスキャンダルへと発展し、最終的にPinterestの共同創業者でCEOのベン・シルバーマンが、デービスに直接電話をかけて釈明するという結果になった。

以後、Pinterestはユーザの信頼を失わないよう慎重に行動している。その成果は今回のプロモーション・ピンにも表れており、ブラッドフォードによれば多くのユーザの意見を取り入れたという。Pinterestの収益化計画をユーザに正しく理解してもらい、なおかつアフィリエイト・リンクの時のような嫌悪感を招かないような努力がなされている。

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「プロモーション・ピンは度重なるテストの成果です」とブラッドフォードは話す。「今のところこの広告は、検索とカテゴリー・フィード内にしか現れません。関連性の高い情報だけを表示し、利用者の邪魔にならないことが大切なのです。ユーザのフィードバックとマーケティング会社の意見を取り入れた結果、今の形になりました」。

地道な進化

9月にはプロモーション・ピンは試験的に画像部分をハイライトしていた。今年の5月からはそのプロモーション・ピンに12社からの広告が入り始め、カテゴリーや検索結果に表示されるようになった。

最初の広告主にはABCやWalt Disneyのような有名企業が選ばれており、Pinterestの慎重な姿勢がうかがえる。ブラッドフォードによれば、世界のトップ100ブランドのうち93が既にPinterestのアカウントを持っているという。広告主からの需要も多く、プロモーション・ピンへの関心は極めて高いようだ。

「企業からすれば、Pinterestは自社のブランドをアピールするのにうってつけの場所なのです」とブラッドフォードは言う。「我々はものすごく柔軟です。他社の検索広告やディスプレイ広告は、消費者にアピールするにはやや限定的です」

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今のところ、プロモーション・ピンはサイトの特定の個所にしか表示されないが、いずれはもっと多くの企業に向けて門戸が開かれることになるだろう。その際、ユーザの感情を害さないようにしなければならない。FacebookやTwitterも、ユーザに不快な思いをさせずに企業の宣伝をする方法は未だ見いだせていない。よってPinterestは、ユーザの意見を聞きながら透明性の高いテストを続けているという。

ブラッドフォードが現在注力しているのは、広告主にPinterestの効果的な使い方を学んでもらうことだ。ユーザが見たいと思うようなピンを企業が提供できるようになるのが理想で、そうなればプロモーション・ピンは他の投稿に溶け込み、広告を見せられているという感覚を軽減できるだろう。

「私たちは広告主と提携する際に、ただ利益のことだけを考えているわけではありません」とブラッドフォードは語る。「我々はパートナー企業にPinterestを使いこなしてもらい、もっとも有機的な方法で消費者と繋がってほしいと考えているのです」。

Lauren Orsini
[原文]


※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら


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