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山谷剛史の「アジアIT小話」 第74回

フィリピンで人気急増中のオンライン英会話教室の裏側

2014年05月29日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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ハード面ではこだわるがソフト面でのこだわりは少ない

 さらにシーラーさんはこだわりを語る。「ネットに支障が出たら問題だから、プロバイダーを2つ契約したわ。それから万が一のPCトラブルの際も仕事が継続できるように、もう1台タワー型PCを購入したいわね」

 一方で「今担当している生徒は何十人といるわ」というシーラーさんは、ソフト面に関してこだわりが少ない。

 授業ではSkypeのビデオチャット機能を使う。ボイスチャットがメインだが、話しながらテキストチャットで説明を書いたり、オックスフォード英語辞典のサイトでの単語の説明のURLをペーストして説明したりと、先生としての経験は豊富だ。

 ついでに「今日は全何回のレッスン中、何回目」ということまでSkypeで書いて生徒と共有する。一部の学校では、ちゃんと生徒や先生の管理をするシステムを自前で構築したり、また販売されているオンライン英会話学校システム構築キットを購入しているが、シーラーさんは「生徒と教師、お互いが信用しているから」と特別なシステムに頼ろうとはしない。

 また、送金に関しても特別なシステムを使うことなく、PayPalを利用しているという。プロモーションも「よくわからないの」といい、Facebookでしか行なっていないという。

日本人は信用できて時差も少ないので仕事がしやすい

 シーラーさんの生徒は日本人が多く、日本人は信用できると評価が高い。また時差が1時間しかない点も仕事がしやすくてうれしいという。もちろん仕事は選べず、イタリア人からのニーズがあり、イタリア人生徒とのやりとりでは相手にあわせてシーラーさんは深夜に起きてレッスンを行なう。

 一般的にはフィリピン人は時間を守らないとも言われているが、相手が時間を守るだけに、シーラーさんは厳しく仕事の時間管理を行なう。

ADSLの普及で在宅英語教師が増える!?

 フィリピン発の統計によれば2008年にはADSL加入者数は少なかった。3Gによるデータ通信も値段が高くてSkypeでビデオチャットをするにはいまだ非現実的だ。

 だから、近年はADSL環境が急速に改善したために在宅で英語を教える人が増えたといえる。今後も後に続けとばかりに在宅ワークの英語教師志望の人は増え続けるだろう。

 シーラーさんは「今は忙しくて、なかなかゆっくり外出できないの。やがてはタブレットを買って外出できるようになりたい」という。

 タブレットに加え、3G環境が整ったときには先生はより自由に好きな場所でレッスンを行なうのではなかろうか。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D)。

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