デルは今年1月、Dell Networkingスイッチ製品において、キュムラスネットワークスが開発するネットワーク機器向けOS(ネットワークOS)「Cumulus Linux」をサポートすると発表した。再販契約も締結しており、今後はデル自身が開発する「Dell Networking OS」と並行して提供するという。その戦略について、来日したデルのOpen Networking グローバル戦略担当、アドナン・ブッタ(Adnan Bhutta)氏に聞いた。
“ネットワーク機器をLinuxデバイスにする”Cumulus Linux

米デル Open Networking グローバル戦略担当、アドナン・ブッタ氏
Cumulus LinuxとはどんなネットワークOSなのか。まずはここから説明したい。
これまで長年にわたり、ネットワーク機器ベンダーはそれぞれ独自にネットワークOSを開発してきた。代表例としてはシスコシステムズの「IOS」、ジュニパーネットワークスの「Junos」などがあり、デル自身もDell Networking OS(FTOS)を持っている。これらは自社機器専用のOSであり、たとえばA社のネットワークOSはA社製のスイッチでしか動作しない。
一方でCumulus Linuxは、ブロードコムやインテル、フリースケールなどの汎用チップ(マーチャントシリコン)を搭載した汎用ネットワーク機器(ベアメタルスイッチ)で動作する。公開されているCumulusの対応ハードウェアリストを見ると、デルのほかクアンタなど数社の機器が載っている。
Cumulusは、ブッタ氏の言葉によれば「完全にLinux(Debian)ベースのネットワークOS」だ。よりわかりやすく言い直せば、“スイッチ上で稼働するLinuxディストリビューション”と言えるだろう。
この図のとおり、CumulusではLinuxカーネルのNICドライバやARPテーブル、ルーティングテーブル、ブリッジテーブルなどを用いて、Linuxカーネルがスイッチのハードウェアを管理する仕組みになっている。さらにシェル(bash)やエディタ(vimなど)も備えており、設定ファイルはLinuxと同じなので、サーバー管理者ならば新たにネットワークOS独自の操作を覚えなくても容易に扱える。
そして、ユーザースペースを備えているため、スイッチ上であらゆるLinuxアプリケーションを動作させることができる点も大きな特徴だ。上図にあるとおり、ルーティング、仮想ネットワークとの統合、管理自動化やモニタリングのツールなどが使える。また、ユーザー自身で独自にアプリケーションを開発するのも容易になる。
スイッチ上でLinuxアプリケーションが動作する利点
ブッタ氏は、スイッチがCumulusを搭載することで可能になるユースケースを2つ挙げた。
1つは、クラウドインフラなどで多数のサーバーとスイッチを扱う場合。従来ならば、それぞれ別の管理ツールでサーバーとスイッチとを扱っていたため、プロビジョニングには大きな手間と時間がかかっていた。Cumulusによって、スイッチを“Linuxサーバー扱い”できるようになるので、たとえば「OpenStack」「Chef」などのクラウド/サーバー管理ツールを使って、一元管理や管理の自動化を実現するのが容易になる。
もう1つは、レイテンシ(通信遅延)を削減したい場合。ブッタ氏はロードバランサーを例に取り、外部のLinuxサーバーではなくスイッチ上でロードバランサーを稼働させることにより、そのレイテンシを削減できることを説明した。
Cumulusサポート製品の第一弾として、デルではx86ベースのトップオブラック(ToR)スイッチ「Dell Networking S6000」「同 S4810」の対応を発表している。北米市場では3月末から、日本市場でも今夏から、既存のDell Networking OSと並行してCumulus Linuxを販売していく予定だ。顧客ニーズも踏まえながら、サポート製品群は今後も拡大していきたいと、ブッタ氏は語った。
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