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「CROSS 2014」で語り尽くされた、プライベートを幸せにするための技法

エンジニアの恋と愛とセックス、成功の鍵は“アジャイル”にある

2014年02月27日 06時00分更新

文● 五味明子

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エンジニアはなぜ「非モテ」か、本当に「非モテ」なのか

 仕事のできるAV男優のように「感情のスイッチ」を自在に操り、自分の心をシステマティックに扱うことができれば、エンジニアはもっと恋愛やセックスに積極的になれるはず――。しかし現実にはなかなかうまくはいかないようだ。セッションではエンジニアを含め、いわゆる“理系男子”に共通するいくつかの「非モテ要素」が挙げられた。

 たとえば矢野さんは、エンジニアが持つ抽象化能力や効率至上主義がすれ違いを生むケースを指摘する。

 「彼女とは1年会っていないけど、俺たちは付き合っているし、メールでつながっているから大丈夫、と考えるエンジニアは意外と多い。これは女性にとってはかなりムリな感覚。プログラムがあるから実態はなくてもかまわない、というのは恋愛にはあてはまらない。また、短いスパンで最大の結果を出そうと意識しすぎな面もある。最大効率を目指すとかえって恋愛から遠ざかる結果になる」(矢野さん)

エンジニアの恋愛事情を、IT用語を織り交ぜつつ的確に分析する矢野さん。セッション前には二村監督のビデオをしっかり予習してきたそう。さすが!

 一方、理系男性から「出会いが少ない」「好みの女の子に出会えない」という声を聞くというコヤナギさんは、「まるで空から運命の相手が降ってくるのを待っているような感じ。そういう人はやっぱりモテないと思う」とコメント。たしかに好みのタイプ=“仕様”の途中変更を頑として受け付けない“ウォーターフォール・モデル”では、恋愛の完成までに時間がかかりそうだ。

 コヤナギさんのコメントに対し、二村監督は「(好みの)レベルを下げるとか、妥協するとかではなく、自分を受け入れてくれる女性のところに行くのが大事」だと強調する。自分の魅力を理解してくれる女性、興味を持ってくれる女性は必ずいるはずで、たとえばマンガやゲーム、スポーツなど共通の趣味で盛り上がることのできる相手がいたら「真っ先に大切にすべきだ」(二村監督)。理想の相手、運命の相手が突然現れることを夢見て「非モテ」を嘆くよりも、自分の得意分野に響いてくれる女性を積極的に探しにいくほうが成功率は高いだろう。

トライ&エラーを恐れない「アジャイル型恋愛」のススメ

 もう1つ、コヤナギさんは“理系男子”に対し「すぐに結婚を考える人が多すぎる」と苦言を呈する。「もっと(恋愛の)途中経過を楽しんでほしい」(コヤナギさん)。

女性から見た男性エンジニアの印象について「生身の女性を怖がっているのではと思うことも」とコヤナギさん

 一定の年齢を過ぎると「すぐに結婚に持ち込まないと、もうチャンスはないかもしれない」という強迫観念にとらわれてしまいがちだ。だが、矢野さんは「恋愛における多少の失敗はイテレーション(アジャイル開発において失敗と修正を繰り返して完成度を高めていく工程)だと思って、もう少しトライ&エラーに積極的になったほうがいいのでは」と、開発と運用になぞらえて指摘する。

 「愛は始めることよりも続けることのほうが難しい、いわば運用のようなもの。そこには技術が必要。恋愛はウォーターフォールではなく、恥をかいて巻き戻るアジャイルな仕様として理解したほうがいい」(矢野さん)

 二村監督も「恋愛は恥をかくことが重要。怖がりながらも、少しずつ踏み出してほしい。ちょっと踏み外したとしても死んだりしないから大丈夫」とエールを送る。

 「IT業界の男性は本当に優良物件だと思う。ヤンキーとオタクという対立図式がよく引き合いに出されるけど、僕はこれからの時代はヤンキーではなくオタクが引っ張っていくと信じている。僕自身もオタクだし、そう信じながら日夜AVを作っている」(二村監督)

「No Pain, No Gain」――自分の心に正直になって行動しよう

 自分の良さを理解し、受け入れてくれる相手をどうやって見つけたらいいのか――。二村監督は、自らの経験をふまえながら「自分に正直になる」ことの重要性を語った。

 「僕は『自分のエロさがカネにならないはずがない』と信じこんでAV男優になったが、男優としてはモノにならず、仕方なしに監督の道に入った。映像の勉強をしていなかったから、カット割りもできない素人同然の状態。でもAV男優をやっていたので、人前で股間をさらすことはまったく恥ずかしくなかった。なので撮影中にオナニーしながら『あとフェラを30秒!』とか指示を出した。ウケを狙ったわけじゃなく、そうしたほうがエロい絵が撮れるんじゃないかと思ってやったんだ」(二村監督)

 やがてそれが、二村監督独自のスタイルとして浸透していったのだという。

 「(文字どおり)人前で自分をさらけ出し、自分の得意分野で勝負したことで、いい女優やカメラマンが集まってくるようになった。カット割りや絵コンテのかわりに、スタジオでオナニーをするということを武器にしたら、それが監督としてのスタイルになり、業界内のコミュニケーションにもつながっていった」(二村監督)

 もっとも、こうした先鋭的な行為は大きなリスクテイクでもある。二村監督も「ビデオが売れたからいまこうしていられるワケで、売れなかったら会社から追い出されていた」と笑う。だが、「恥をかくかもしれないし、空気が読めない奴と言われるかもしれない。それでも自分の心に正直に行動しなければ、求める人はやってこない」と訴える。仕事も恋愛も、自分に正直になって行動するという、ある意味で最大のリスクを取った人だけが、大きなリターンを得られるということだ。

 DevOpsは、失敗もフィードバックのひとつとして受けとめ、改善につなげていく柔軟性と迅速さを実現するためのコンセプトである。同じように恋愛も、失敗を受け入れつつ改善を続けていく勇気を持てば、そして自分に正直であり続ければ、きっと遠くないうちに幸せはもたらされる。そうしてエンジニアがつかんだ幸せは、間違いなく社会を幸せにする原動力にもなるはずだ。そう感じさせてくれるセッションだった。

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