すでに54種類のgTLDがルートゾーンに追加
新gTLDへ準備着々!2013年「ドメイン名ニュース」
2013年12月30日 06時00分更新
2013年12月18日、JPドメイン名を管理運用する「日本レジストリサービス(JPRS)」が、恒例となっている2013年度版の「ドメイン名重要ニュース」を発表した。JPRSのドメインネームニュース担当者が選んだ今年の話題とは?
1位 新gTLDの初期審査終了とルートゾーンへの登録開始
今年の1位は、「新gTLDの初期審査終了とルートゾーンへの登録開始」。さまざまな問題からスケジュールの遅れが懸念された新gTLDプログラムだが、申請内容について技術的および財務的に問題がないかを確認する初期審査の終了がICANNから8月30日に発表されたことでひとつの進展を見せる形となった。初期審査を通過した新gTLD申請者は、ICANNとのレジストリ契約を締結し、レジストリとしての運用能力の確認試験(委任前試験)を通過することで、その申請文字列がルートゾーンに登録(委任)されることになる。
その中のひとつに、最初に委任された日本語の新gTLDとして一時話題となった「.みんな」があるが、これはグーグルのドメイン事業会社である米国Charleston Road Registry社がレジストリとなっている。ICANNのサイト(ルートゾーンに追加された新gTLDを示す「Delegated Strings」参照)では、本記事執筆時(日本時間2013年12月24日)に54種類のgTLDがルートゾーンに追加されていることが確認できる。興味がある方は、当該ページを見てみるとよいだろう。
このように動き出した新gTLDだが、新gTLDプログラムのプロセスには現在も未決事項が数多く残っている点には注意が必要だ(3位となった新gTLDの商標保護プログラムもその1つである)。また、新gTLDではドメイン名紛争が起こった場合、ICANNにより定められているUDRP(Uniform Dispute Resolution Policy:統一ドメイン名紛争処理方針)に従わなければならないため、いったん紛争が起こってしまった場合にはWIPO(World Intellectual Property Organization:世界知的所有権機関)などを通じて解決、もしくは裁判に持ち込む必要がある。新しくできるgTLDに興味がある方は、そういった点にも注目すべきだろう。
2位 オープンリゾルバーを悪用した史上最大級のサイバー攻撃が発生
今年の3月に起こった、スパム対策組織のSpamhaus Project、および同組織を支援した米国Cloudflare社の2つを攻撃目標とした大規模なDDoS攻撃は、インターネット関係者に大きな衝撃を与えた。ピーク時には300Gbpsを超えたというDDoS攻撃は、規模の大きなISPにおけるピーク時の通信量に匹敵するものである。そのため、インターネットの一部で接続性が悪くなるなどの影響が観測された。
しかも、この攻撃に悪用されたのがインターネットにとって必要不可欠な仕組みであるDNSであったことがインターネット関係者の危機感につながった。DNSは、名前に対応するIPアドレスや電子メールの宛先などを適切に探し出す役割を担っている。私たちがインターネットで相手に正しく接続できるのも、DNSがきちんとその役割を果たしているからである。したがって、その対策は、緊急で重要度の高い課題となった。
この問題の対策には、攻撃者がDNSの仕組みを悪用しにくくする必要がある。今回の攻撃の多くは「オープンリゾルバー」と呼ばれる「サービス対象を制限していないキャッシュDNSサーバー」を外部から悪用することで引き起こされていることが分かっているため、ISPなど多くの事業者が自らの管理対象のキャッシュDNSサーバーについて、本来サービス対象となるネットワークのみにそのサービスを制限するという形を徹底することでオープンリゾルバーの撲滅に動き出している。
また、権威DNSサーバーについては、「DNS RRL」という「同一とみなせるパターンの高頻度なDNS応答に対し、応答頻度や大きさを制限できるようにする」ための技術が開発された。DNS RRLは、日本ではJPRSが全体を管理し、JPドメイン名を利用可能にするための「JP DNS」に対して導入を進めている。インターネットを襲った危機は、その関係者の努力により対策が進みつつあると考えていいだろう。
3位 新gTLDの商標保護プログラム開始
3位にも、新gTLDに関連する話題が入った。これは、TLDが大幅に増加することによって、より活発になると予想されるサイバースクワッティングなどの問題を避けるために必要となるものだ。現状では、2つの商標権保護施策が設けられている。ひとつは、商標権を持つ者に対して、それを持たない者によってドメイン名の登録申請が行われたときにその旨の通知が届くようにするというものであり、もうひとつは、現状のUDRPよりも迅速で安価なドメイン名利用停止の枠組みの提供である。
前者は、商標権を持つ者が「Trademark Clearinghouse(TMCH)」と呼ばれる仕組みに自分の商標を登録することで、他者による申請に対処することを可能にする。TMCHでは他者からの申請があった場合にその旨の通知が来るということと、商標権者は商標権を持たない者よりも優先的に該当するドメイン名を申請できるという点がポイントで、その対策は各商標権者の判断となる点には注意が必要だろう。後者は、ドメイン名紛争処理としてドメイン名の利用停止に特化した「Uniform Rapid Suspension(URS)」という仕組みを用意するというものである。ただし、URSで可能なのはドメイン名の利用停止のみで、登録の取り消しや登録者変更のためには、改めてUDRPや裁判などが必要になるという点に注意しなければいけない。
新gTLDプログラムではこれまでのgTLDと異なり、商標や商号そのものによるTLDの運用も可能となっている。今回のドメイン名重要ニュースには出てこないが、こうした「ブランドTLD」の申請組織の有志によって、ブランドの信頼性を向上・維持させることを目的とした、ICANNレジストリ契約に対する「Specification 13」といったものも提案されている。
新gTLDには、まだまだ不明な部分も多い。したがって、今後とも情報の収集と分析を続けていくことが欠かせない。関心のある方は、日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)のサイトや、JPRSのメールマガジン増刊号などで情報提供されているので、それらを中心に見ていくとよいだろう。
(次ページ、4位 頻発するレジストリ・レジストラへの攻撃)
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