すでに54種類のgTLDがルートゾーンに追加
新gTLDへ準備着々!2013年「ドメイン名ニュース」
2013年12月30日 06時00分更新
4位 頻発するレジストリ・レジストラへの攻撃
4位となったのは、ドメイン名ハイジャックなどを目的としたレジストリ・レジストラへの攻撃である。2012年10月に、アイルランドのccTLDである「.ie」においてレジストリの登録情報が不正に書き換えられ、「google.ie」や「yahoo.ie」などの著名なドメイン名がハイジャックに遭ったことは大きな問題となった。以降、いくつものレジストリ・レジストラへの攻撃が行なわれ、単なるドメイン名ハイジャックにとどまらず、アカウント情報の流出に伴う全登録者のパスワードリセットに至る事例なども報告されている。
この問題で注目すべき点は、多くの事例においてレジストリ・レジストラの基幹システムそのものではなく、外部向けにサービスしているWebサーバーの脆弱性や、標的型攻撃などにより漏えいした顧客のアカウント情報が悪用されているという事実だろう。こうした脆弱性は多くの場合、既知のものであり、その対策は明確なはずである。利用者側においてはアカウント情報の取り扱いの厳格化やそれぞれのレジストリ・レジストラが持つ技術力の見極め、そして、レジストリ・レジストラにおいては既存の脆弱性に対する確実・迅速な対応、技術力の向上・広報活動が、今後ますます重要になっていくであろう。
5位 国際的なインターネットの技術調整の役割を担う10団体が
モンテビデオ声明を発表
インターネットは、自律分散されたさまざまなネットワークが協調しながらひとつの大きなネットワークを構築することで成り立っている。もともと分散管理されたものが協調しながら結びつくという構造のため、その運営には調整が欠かせない。
ネットワークサービスを提供する組織(企業)は、なぜ面倒な調整をしつつも協調するのだろうか? それは、さまざまなネットワークと接続することで、利用者が希望する相手と通信できることが、ネットワークそのものにとって何よりも重要な価値を生み出すからである。したがって、インターネットに接続する組織、および、インターネットへの接続サービスを提供する組織は、何よりも接続性を重視することになる。この共通の価値感こそが、インターネットをより便利なものへと発展させている原動力のひとつになっている。
今回のモンテビデオ声明は、そのような実情の中、特定の国家が対外的な接続を強く規制することで、ともするとインターネットの分断に結びつくような行動を抑止すること、そして、国や政府の都合による運営の強制ではなく、インターネットの原理原則に従ったグローバルな運営こそがインターネットの発展にとって重要であることをあらためて呼びかけるものであると言うことができる。
インターネットの利点は、その柔軟性にある。そして、その柔軟性があるが故に、その上で作られるサービスにも柔軟性が生まれるという好循環が、これまでのインターネットの発展を支えてきたと言えるだろう。私たちは、そうした点からインターネットを考えることが重要なのだとあらためて思わされる内容である。
番外編 都道府県型JPドメイン名の累計登録数が1万件を達成
番外編は、JPRSが登録管理を行う「都道府県型JPドメイン名」の累計登録数が、2013年3月1日時点で1万件を達成したというものだ。都道府県名を使用したドメイン名というと、一般的には、まだ、従来からある東京都の“metro.tokyo.jp”や大阪府の“pref.osaka.jp”といった「地域型JPドメイン名」や、横浜市の“city.yokohama.lg.jp”や京都市の“city.kyoto.lg.jp”といった地方自治体で使われている「LG.JPドメイン名」を連想する方が多いかもしれない。
その都道府県型JPドメイン名も、2013年12月1日時点で12,582件という累計登録数になり、登録済の地域型JPドメイン名の数を大きく上回ったという。これは、ホームページやメールのアドレスから地域とのつながりを示すことが可能になるということだけではなく、世界でもトップクラスの安全性を誇るというJPドメイン名であることの価値が大きいのかもしれない。
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