音と使い勝手は予想外の結果、明確な結論はなし
「DSPで音場拡張」のMINI JAMBOX、「左右セパレート」のUSBS-WW1、「ひとつで十分」のOlasonic TW-BT5。この三者三様のアプローチでも分かるように、小型スピーカーのステレオ音場問題には今のところ結論はないようだ。
最適解と思われた左右セパレートのUSBS-WW1も、充電も左右2台分しなければならず、これが意外と面倒だった。またステレオペアリング時には待ち受けモードが効かず、無再生状態が5分続くとオートパワーオフがかかり、一度電源が落ちると手動で入れ直す必要がある。ただ、そうした実用上の難はあっても、研究室から出てきたプロトタイプのような製品として、面白さを感じたのはこの製品だった。左右一体型のスピーカーはノートPCで使う場合、置き場所に困るが、セパレート型ならPCの両脇に置ける。しかもケーブルがなくて、机の上もすっきりする。
逆に「どうせ小型の左右一体型ではステレオ音場は得られないから」と、逆転の発想でモノラル仕様としたTW-BT5は、実際に使ってみるとメーカーの主張も納得できた。無理にステレオ一体型にしなければ筐体は小型で済み、口径の大きなユニットが使えるので、低域からしっかりした音が出せる。問題は「モノラルでここまで行けるならステレオなら多分もっと」と思わせてしまうところ。そうした拡張路線は、ポータブルBluetoothスピーカーの魅力と相反するので悩ましい。
MINI JAMBOXは3年も前からある昔ながらの(?)スタイルながら、LIVE AUDIOを効かせるという前提なら、バーチャルとはいえ十分納得できる音場感が得られる。特に映画を見る場合は効果的で、今もやはりBluetoothスピーカーの魅力を端的に表現した製品であると思う。
それぞれ製品として新鮮で魅力的だが、ポータブルスピーカーとして洗練されているのはMINI JAMBOX。そしてコロンブスの卵的な発想の転換を楽しみたいのならTW-BT5。近未来のオーディオのプロトタイプを手に入れたいならUSBS-WW1という結論になるのではないか。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター、武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。インターネットやデジタル・テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレ。