地方のコンピューター学校は“よろずや”状態
ガーカという、このあたりの村々の中では中心的な街に行くとIT環境が改善する。街自体は自転車で5分も走れば端から端へ行けそうな小ささだが、村にはなかった食堂や商店も多数ありにぎやかだ。
携帯電話ショップや家電店があり、その中には「SAMSUNG SmartPhone」の看板がかかったサムスン専門の家電屋もある。
ちなみに、サムスン印のスマートフォンショップはガーカよりもさらに大きなその地方の中心都市「チャープラ」においてはそこら中で見るようになり、インド人の脳裏に「スマートフォンといえばサムスン」を植え付けているといっていい状況だ(対して街ではソニーのXperiaの広告もあるが非常に少ない)。
話を戻すとガーカでは、周辺の村々の結婚式に備え、ビデオ撮影&編集代行屋や写真屋もある。
さらにその街には4軒のコンピューター学校もあった。私営の職業訓練校で、ほかにも英語学校などがある。インドを旅すれば、コンピューター学校や英語学校の看板はよく見るので、4軒あるガーカもごく標準的な街であろう。
各コンピューター学校は、タワー型の自作PCが5台程度と先生用のノートPC、各PCにつながったプリンターが1台置かれ「日本の商店街にあるパソコン教室」程度の基礎を教えるのがメイン業務。
日本円で2万円程度で毎日1時間、半年にわたってPCのスキルを勉強する。周辺の村々から学生が来るので、毎時間さまざまな学生が来てPCの基礎を勉強している。
そのほかにもインターネットカフェとしても利用できるし、ファイルの印刷出力も行なうし、ヒンディー語や英語のタイピング代行も行なうし、PCパーツも販売するし、自作PCも販売する。つまりコンピューターのよろずやなのだ。
どのコンピューター学校の先生も、話を聞くと皆この街出身の地元民で、人々のスキルをあげて生活をよくしよう、生活環境をよくしようという大義があってコンピューター学校を開いたとのこと。
その一環で一部のコンピューター学校では、インド海軍の事務作業のアウトソーシング業も斡旋している。コンピューターを学べば何かいい仕事が見つかる、そんな環境を各学校の経営者兼先生は小さなインドの街でも作り出している。
20代前半のコンピューター学校の先生宅に呼ばれて行ってみれば、レンガ作りの家の中で、インドメーカーであるVideocon製 47型3Dテレビがあり、DVDプレーヤーがあり、さらに専用3Dグラスも家族4人分所持していた(しかし白物家電はニーズがないから不要とのこと)。
もちろんスマートフォンも現地では高いモノを所有しFacebookなどを楽しんでいるとのこと。田舎暮らしのインド人といえど、多くの学生を抱え仕事で成功した人もいて、彼らは関心のあるモノに投資していたのだ。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D)。
この連載の記事
-
第204回
トピックス
必死に隠して学校にスマホ持ち込み!? 中国で人気のスマホ隠蔽グッズは水筒に鏡に弁当箱 -
第203回
トピックス
死んだ人をAIを動かすデジタル蘇生が中国で話題! 誰もが「死せる孔明生ける仲達を走らす」時代に!? -
第202回
トピックス
停滞感があった中華スマホだが、生成AIが盛り返しのきっかけになるかも -
第201回
トピックス
ようやく高齢者にスマホが普及し始めた中国 ECで爆買い、そして詐欺のカモにされることも -
第200回
トピックス
世界で台頭する新興中国ガジェットブランド総ざらい 有名になる前に知っておきたい -
第199回
トピックス
中国の寒冷地ではEVは不人気!? スマホは大丈夫? 中国の極寒環境のIT事情 -
第198回
トピックス
世界トップのIoT機器ラインアップを抱えるシャオミ でも来年にはEVに追いやられてしまうかも!? -
第197回
トピックス
中国でiPhoneがピンチ!? すぐには消えないだろうが、脱iPhoneは進むかもしれない -
第196回
トピックス
中国でシェアマッサージチェアが大量導入され、そしてトラブルあれこれ発生 -
第195回
トピックス
中国の真面目版2ちゃんねる「天涯社区」が終了 ネット文化の変化の波に呑まれる -
第194回
トピックス
光るワイヤレスイヤホンから動画ECサイトまで、元アリババの事業部長が取り組む日本での本気ビジネス - この連載の一覧へ