AppleやGoogleではない新たなエコシステムを
必要としている企業は存在する
MozillaはFirefox OSを送り出すにあたって、周到な準備を進めてきた。2月のMobile World Congressでは、キャリア、端末メーカー、チップメーカーらと提携を発表、ほとんどがCEOが発表会に出席し本気をアピールした。キャリアはローンチ済みのTelefonica、T-Mobileのほか、米国のSprint(ソフトバンク買収が決まっている)と日本のKDDIの名前もある。端末メーカーは、すでに発売済みのZTE、Alcatel Oneのほか、Huawei Technologies、LG、ソニーなどが参加を表明している。
これらの企業は「なにか違うものが必要だという状況」を共有しているとし、「一緒に変化を起こそうとしている」と言う。中でもキャリアについては、「これまでは閉鎖されたエコシステムで全体を制御できていたが、AppleとGoogleにより横に追いやられた」と立場を説明する。「多くのキャリアが現状のビジネスとビジネスモデルを変えたいと思っている」という。第3のエコシステムを狙うMicrosoft/Nokiaも(GoogleとApple同様)営利企業であるのに対し、非営利というMozillaの立場が一部キャリアの信用を勝ち取る要因になったという。
モバイルもPCが辿った歴史を繰り返している
ウェブとモバイルの融合はいずれやってくる
Baker氏は現在のモバイルを、MicrosoftとAppleが戦ったパーソナルコンピューターの黎明期に似ていると描写する。では、現在のモバイル業界はどういう状況なのだろうか? それに対しては、誰もそれほど大きな不満を感じておらず、「すべてがよく見える時期」だと語る。一方で「多数の企業がAppleに依存しながらAppleを嫌っており、Googleに依存しながらGoogleを嫌っている」ため、ビジネスとしてみるとバラ色の時期にかげりが見え始めているかもしれず、そしてこれらはすべてパーソナルコンピュータ時代に経験した一度通った道なのだとする。
その中でMozillaも同じ行動を取ろうとしている。Internet Explorerによる支配に、多くの人が疑問を感じていないときに、Mozillaは「Firefox」をローンチ。ブラウザー市場を大きく変えた。「我々は市場に新しい可能性を見せた」とし、これを今回モバイルでFirefox OSが行なう。「異なるモデルがなにを意味するのか、すぐにはピンとこないかもしれない。(だからこそ)製品をデモして、投入して、新しい選択肢を示すことが我々の仕事」と語る。
そしてウェブとアプリのマージに向けて、ウェブから携帯電話の機能にアクセスできる仕様の開発をMozillaが率先して進めてきたとアピールする。技術的な視点では数年後には、いずれゆるやかにマージするとの見通しを示しつつ、「そこでFirefox OSが成功するのがベストだが、確約されてはいない。だがMozillaなしではもっと時間がかかるだろう」とMozillaのリーダーシップを強調した。