フィーチャーフォンが人気のラオカイ
一方で、ベトナム側のラオカイという町には、PCやスマートフォンやタブレットを扱う全国展開のチェーン店「Thegioididong」(関連サイト)が1軒ある。スマートフォンでは地場メーカーのほか、サムスンやソニーなど外資系メーカーの製品が販売されている。やはりホーチミンシティと比べると選べる商品は少ないが、それでもある程度スマートフォンやタブレットを選んで購入できる。
そのほかにも、扱う商品のほとんどがフィーチャーフォンの大きな携帯電話屋が1軒と、iPhoneと書かれた電光掲示板がピカピカ光りつつフィーチャーフォンばかりを展示する小さな携帯電話が数軒あった。さらに、さまざまなものが売られる市場内で中国のノンブランドケータイ(スマホ含む)「山寨機」が売られていた。
客入りが一番いいのはフィーチャーフォンを扱う大きな携帯電話屋と、山寨機を扱う市場で、ガラスのショーケースを現地のベトナム人が我も我もと見ている。
客層でいえば、Thegioididongに来る人は身なりがよい。まだまだベトナムの地方都市ではスマートフォン購入のハードルは高いことがうかがえる。VinaphoneやViettelといったキャリアのオフィスはあるが、安価にはスマートフォンを販売していない。市民はバイクで移動し、携帯電話やスマートフォンを触っている人はホーチミンシティやハノイに比べ少ない。
ラオカイの住人は河口でスマホを買わない
ラオカイにインフラがないわけではない。各キャリアは3Gネットワークをラオカイで張り巡らし、またブロードバンドにおいても、セットトップボックスをつなげてオンデマンドでビデオを楽しむ家庭を何軒も見た。ゲームセンターと化したインターネットカフェも住宅地で散見した。
河口では、ブロードバンドと3Gインフラはあり、家電量販店では中国メーカーのスマートテレビも売られている。
河口とラオカイを比べると、上海とホーチミンシティとの比較同様、中国のほうがよりITが浸透しているのがわかる。
では、ラオカイの人々が徒歩圏の河口に行ってスマートフォンを買うかというと、どうもそういう話を聞かない。
スマホの仕様の問題(中国語と英語しかインストールされておらず、Google PlayやGmailやYouTubeなどのアイコンが消えている)もあるが、加えて精巧なニセモノが多いのであえて中国に行ってまでモバイル機器は買いたくない、とのことだ。
目と鼻の先で高性能なスマホが安価で売られている国境の町でこれなのだから、中国製端末がベトナムで信頼を得るにはまだ時間がかかりそうだ。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D)。
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