NTTドコモに続き導入が期待される
中国で最大の契約数のChina Mobileとの提携
だからといって、Appleは中国市場を重視していないのではない。Appleは9月10日に米国本社で最新のiPhoneを発表した翌日、北京でも発表会を行った。これは初めてのことだ。また、これまで中国市場では世界からは遅れて最新機種を発売してきたが、最新のiPhoneは米国での発売日と同じだ。このように、Appleなりの方法で中国の報道陣、通信事業者(キャリア)、コンシューマーに中国市場を大切にしているメッセージを送っている。
iPhone 5cが廉価版ではなかった後で注目されるのは、キャリア戦略だ。Appleは現在、中国第2位のChina Unicom、3位のChina Telecom向けにiPhoneを提供しているが、最大手のChina Mobileではまだだ。China Mobileは7億5000万人近くの加入者を持つ巨大キャリアで、通信方式は自国独自のTD-SCDMA方式を採用している。なお、China UnicomとChina Telecomの加入者数の合計は4億5000万人弱。2位と3位をあわせてもトップのChina Mobileには及ばないのだ。
9月11日の北京での発表会でChina Mobile向けのiPhoneが発表されることはなかったが、同時期にAppleが中国政府(工業情報省)よりChina Mobileの通信網を利用できる許可を受けたことが報じられた。Appleの中国戦略の切り札はまだ残っているのだ。
拡大するのは価格帯ではなく
キャリアと地域
Appleの狙いは、最新のiPhoneが多数のLTE周波数帯(バンド)をサポートしている点からも伺える。iPhone 5cのA1456モデルでは13種のLTEバンドをサポートしており、A1529ではTD-LTEの3バンド、FDD-LTEの7バンドをサポートするなど、利用できる地域が増える。NTTドコモに代表されるようにiPhoneを取り扱っていなかったキャリアを取り込み、LTEでリードをとる考えが見える。
その点からみても、中国戦略に限らず価格を下げる必要はないというのがAppleの考えで、まだiPhoneが購入できるのに手にしていない層を狙うということだろう。
これはAppleの戦略の一貫性を裏付けるものでもある。1月に廉価版iPhoneの噂が多く出回ったとき、Appleのマーケティング担当副社長のPhil Schiller氏は中国メディアに対し、安価なスマートフォンを開発することは自社の方向性ではない、と語っている。Schiller氏はAppleの収益性の高さを強調しており、シェアでの数字よりも収益を重視しているAppleの方針がiPhone 5cで再度証明されたといえる。
だが、キャリア戦略もいつかは限界がくる。そのときにどうするのか? PCでのWindowsとMac OSのように少数派でも構わず、iPod、iPhone、iPadとカテゴリーを作ってきたように、新しいカテゴリーを作るのがAppleのやり方なのだろう。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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