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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第87回

切り札は価格よりキャリア? iPhoneに見るAppleの中国戦略

2013年09月18日 14時00分更新

文● 末岡洋子

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 Appleが「iPhone 5s」「iPhone 5c」の2機種を発表した。世界的に見れば、Androidにシェアを奪われているとはいえ、トレンドセッターとしてのAppleの存在感は誰もが認めるところだろう。今回は中国など途上国を狙った廉価版登場が期待されたが、iPhone 5cの中国の価格は4488元。日本円にして約7万3000円である。Appleの中国戦略はどうなっているのか?

北京のApple Store。中国でも戦略は大きく変わらないのがApple。NTTドコモに続いて、世界最大の契約数を持つキャリアと契約できるのか!?

中国市場ではシェアを落とすも
期待されていたようには安くはなかった「iPhone 5c」

 中国は世界最大のスマートフォン市場だ。Canalysによると、2013年第2四半期の中国スマートフォン市場の成長率は前年同期比108%増の8810万台。なんと、中国だけで世界全体の3分の1以上に達している。

 最大手はSamsungでシェアは2割近く、2位はLenovo、以下Huawei TechnologiesやZTEといった地元メーカーが続いている。当然、主役はAndroidで、中国で出荷されるスマートフォンの8~9割といわれている。このようなAndroid優勢市場において、Appleのシェアは7番手の5%。前年同期の9%からシェアを落としており、実際Appleの業績を見ても、中国市場の売上はマイナス成長となっている。

 言うまでもないことだが、スマートフォン市場が拡大する中でミッドレンジ、ローエンドの端末が重要になっている。中国市場は巨大だが、ハイエンドからフィチャーフォンまで守備範囲が広く、多数の機種を揃えるSamsung、地元ブランドの強みを生かし比較的低価格なスマートフォンを投入するLenovoやHuawei、低価格だが高スペックで若者に受け入れられているXiaomiやCoolpadなどの新興メーカーがひしめく市場だ。ここでAppleの次の手として期待されていたのが廉価版だ。

 いざベールを脱いだiPhone 5cは、安価なスマートフォンではなかった。たとえば、Xiaomiが前の週に発表した最新機種「Xiaomi Mi3」は1999元(約3万2000円)で、フルHDのIPS液晶、13メガピクセルのメインカメラ、クアッドコアプロセッサ(TD-SCDMA版は1.8GHzのTegra4、WCDMA版は2.3GHzのSnapdragon 800)、RAM 2GB、ストレージ16GBまたは64GB、3050mAhのバッテリなどのスペックを持つ。

 倍以上の金額を払って、iPhone 5と(色以外は)ほとんどかわらないiPhone 5cを買う意味はどこにあるのかとなりそうだ。なお、iPhone 5sは5280元(約8万5000円)、5sと5cの差はわずか800元(約1万3000円)だ。なお、中国の価格には付加価値税17%が含まれている。また、中国ではキャリアによる端末への販売奨励金は一般的でない。

 このようなことから、Appleの中国(および途上国)戦略は価格ではないといってよいだろう。iSuppliはiPhone 5cの製造原価を165ドルと推定しており、iPhone 5cの利益率は約35%といわれている。スマホ市場が変わろうと、収益性は犠牲にできないということのようだ。

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